重症急性呼吸器症候群:SARSじゅうしょうきゅうせいこきゅうきしょうこうぐん さーず
最終編集日:2025/2/4
概要
SARSコロナウイルスによる感染症です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは異なります。
2002年に中国で初めての患者が報告され、2003年には集団発生、世界規模での感染拡大が懸念されました。しかし、2003年中にはWHO(世界保健機関)によって終息宣言がなされています。国内での発症者はありませんでした。
現在、日本では2類感染症に分類され、医師の管轄の保健所への届け出義務、必要性に応じた入院措置などが定められています。
原因
SARSコロナウイルスが感染源です。感染経路として、飛沫感染、接触感染が挙げられ、空気感染の可能性も疑われています。自然宿主としてはコウモリが考えられています。
潜伏期間中の症状のない患者からは、通常、感染しません。
症状
潜伏期間は2~10日(平均5日)で、発熱、悪寒戦慄、筋肉痛など、インフルエンザに似た症状が現れます(発症第1週)。その後、乾いたせきや息苦しさ、さらに半数以上で下痢が起こります(発症第2週)。のどの痛みや鼻炎様症状の頻度は低いといわれます。
発症しても約80%は自然に改善に向かうとされていますが、約20%は急速に重度の呼吸困難に陥り、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に進行するため、油断は禁物です。
検査・診断
SARSコロナウイルスの病原診断は、国立感染症研究所ウイルス第三部、あるいは一部の地方衛生研究所(地衛研)などで行政検査として行われ、通常の医療機関では診断できません。
検査は、鼻咽頭ぬぐい液の検査、喀痰検査、血液検査などが行われます。
高齢者、持病のある患者、若年でも症状が強い場合は、胸部X線、胸部CTなどの画像検査を行い、重症度を見極めます。胸部画像で異常(陰影)が認められない場合は軽症、浸潤影という異常が認められた場合には、ARDSに進行するリスクが高いとされています。
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、非定型肺炎など、ほかの呼吸器感染症との鑑別が必要です。
治療
感染症指定医療機関でのみ治療が可能です。安全上の問題から、クリニック、病院等では取り扱いできません。
SARSウイルスに対する治療法はまだありません。
画像検査で異常が認められなければ、解熱剤や鎮咳薬(咳止め)などによる対症療法を行います。
肺に異常所見が認められた場合、多くは入院して、症状・進行度にあわせ、ステロイドやインターフェロンなどの薬物療法、呼吸管理および全身管理が行われます。
セルフケア
予防
国内での感染の流行は、現時点では考えられません。
世界で発症が認められた場合には、官公庁の感染症情報センターから配信される情報に注意してください。
監修
千葉大学医学部附属病院 呼吸器内科 真菌医学研究センター 特任教授
巽 浩一郎


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