心筋炎しんきんえん
最終編集日:2026/4/17
概要
心筋は、心臓を収縮させて血液をからだ中に送り出すための筋肉です。この心筋自体に炎症が生じた状態が心筋炎です。多くは細菌やウイルス感染によって発症する「急性心筋炎」で、発熱やせきなどのかぜ症状から始まります。そのまま自然に治ることもありますが、頻度は少ないものの、なかには重症化してショック状態となり、命にかかわる状態に陥ることもあります。このように重症化するものを「劇症型心筋炎」と呼びます。
また、多くの場合は回復しますが、心機能が回復せず、慢性化して「慢性心筋炎」となる場合もあります。
原因
原因は感染性と非感染性に大きく分けられ、感染性のものにはウイルスや細菌、真菌などによるものがあります。急性心筋炎の多くは、ウイルス感染により発症します。ただし、ウイルスや細菌に感染しても、すべての人が心筋炎を発症するわけではありません。
非感染性の原因には、薬剤などの化学物質、膠原病、過敏性反応などがあります。

症状
発熱やせき、鼻水などのかぜ症状、下痢や腹痛などの消化器症状がみられた後に、胸部不快感、息切れ、手足や顔のむくみ(浮腫)などの心不全症状が現れます。
重症化すると胸痛、呼吸困難、血圧の低下や意識障害などのショック状態へと進行することもあります。重篤な不整脈や心停止を起こすこともあり、突然死の原因となることもあります。
検査・診断
心電図検査や心臓超音波検査(心エコー)が行われます。血液検査では炎症所見や心筋逸脱酵素、ウイルス抗体などを調べます。心筋の詳細な状態を把握するには、心臓MRIが役立つといわれています。重症化が予想される場合には、カテーテルで心筋を採取し、顕微鏡で細胞を観察する心筋生検を行い、病気の原因を調べることもあります。
治療
心筋炎は、心臓がかかる感冒(かぜ)のようなものと考えてください。そのため特別な治療法はなく、安静が基本の治療となります。多くの場合、からだがもつ治癒機能によって自然に回復します。
一方で、劇症型心筋炎の場合は心臓をサポートする治療が重要です。急性期には不整脈や心不全に対する治療から始め、悪化がみられた場合には、血液循環を補助する目的で大動脈バルーンパンピング、補助循環装置、人工心臓を用いた治療が行われます。
セルフケア
予防
心筋細胞は再生能力が低いため、炎症によって壊される細胞の範囲が広がると、心臓に与えるダメージも確実に広がります。かぜは万病のもとといわれますが、かぜが心筋炎につながることもあります。感染症を予防するためにワクチン接種などの対策を心がけ、かぜ症状に加えて胸に違和感を覚えた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
監修
神奈川県立循環器呼吸器病センター副院長 循環器内科
福井和樹