肺アスペルギルス症
はいあすぺるぎるすしょう

最終編集日:2025/1/22

概要

真菌(カビ)の一種であるアスペルギルスによる呼吸器感染症です。

アスペルギルスは土壌や植物、塵埃など身近に存在する真菌で、吸入しても健常者であれば自然に排除されます。しかし、免疫機能が低下していて気道の自浄作用が十分でない場合や、アスペルギルスにアレルギーがある場合に、感染が成立してしまいます。

肺アスペルギルス症には、進行の速い侵襲性肺アスペルギルス症と、慢性に進行する慢性肺アスペルギルス症、アレルギーが関係するアレルギー性気管支肺アスペルギルス症があります。慢性肺アスペルギルス症は慢性進行性肺アスペルギルス症と単純性肺アスペルギローマに大別されます。


原因

アスペルギルスの胞子を吸い込むことが原因となります。何らかの基礎疾患があって発症することがほとんどです。

侵襲性肺アスペルギルス症を発症しやすいのは、血液のがんや高度免疫不全状態の患者で、ステロイドや免疫抑制薬が長期投与された場合などです。慢性肺アスペルギルス症は陳旧性(以前に罹患したが現在は活動が治まっている病巣)肺結核慢性閉塞性肺疾患(COPD)気管支拡張症などがある人に起こります。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は気管支喘息がある人に起こります。


症状

侵襲性肺アスペルギルス症では発熱、せき・たん、血痰、胸痛、呼吸困難などが急激に現れます。

慢性肺アスペルギルス症は通常、これらの症状が1カ月以上にわたって続きます。しかし慢性肺アスペルギルス症の一つである単純性肺アスペルギローマでは、症状が現れないケースもみられます。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では喘息症状の増悪がみられ、微熱、喘鳴、せき・たん、血痰が起こります。


検査・診断

胸部X線検査、胸部CTなどの画像検査、たん、あるいは気管支鏡を用いて採取した気管支肺胞洗浄液での培養検査、血液検査が行われます。

血液検査では、アスペルギルスガラクトマンナン抗原やアスペルギルス沈降抗体などを測定し、アスペルギルス感染の有無や慢性経過の有無を調べます。肺アスペルギルス症が疑われる場合は、基礎疾患により全身状態が思わしくないケースも多いため、からだに負担のかかる気管支鏡を用いた検査などを省略し、血液検査のみで診断されることもあります。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では血清IgE値など、アレルギー反応に関連する値も測定します。また、アスペルギルス抗原に対する皮膚反応テストが行われることもあります。

ほかの細菌や真菌による呼吸器感染症、肺炎などとの鑑別が必要です。


治療

●侵襲性肺アスペルギルス症

抗真菌薬を用います。治療は少なくとも2~3カ月程度必要です。原因となった基礎疾患の治療も並行して行います。


●慢性肺アスペルギルス症

抗真菌薬を服用します。症状が強い場合には、入院して注射薬も用いられます。単純性肺アスペルギローマの治療は感染病巣を切除する手術が基本になります。手術に耐えられないような場合は、抗真菌薬を使います。いずれも6カ月以上の治療期間が望ましいとされています。


●アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

抗真菌薬と併用してステロイドを服用し、喘息の治療も継続します。


セルフケア

予防

肺アスペルギルス症は健康な人には起こりません。肺に基礎疾患がある人、あるいは免疫を抑制する治療によって免疫機能が低下している人は、注意が必要です。呼吸器系の自覚症状が悪化したときに胸部画像診断を含む検査が必要になることもありますので、早めに内科、あるいは呼吸器内科を受診しましょう。

監修

千葉大学医学部附属病院 呼吸器内科 真菌医学研究センター 特任教授

巽 浩一郎

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