気管支喘息きかんしぜんそく
最終編集日:2022/1/11
概要
気管支喘息(きかんしぜんそく)は、空気の通り道である気道に炎症が慢性的につづくことでわずかな刺激にも敏感になり、発作(憎悪)をくり返す疾患です。軌道狭窄により、呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーといった音が聞こえる喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難などが生じます。
症状はさまざまで、軽症から命にかかわるような重篤なケースまで個人差があります。
気管支喘息を起こす最初の原因はおもにハウスダスト、ペットの毛、ダニ、カビなどのアレルギー物質です。たばこやストレスなども要因となります。アレルギー物質に継続的にさらされること(曝露)が慢性炎症すなわち症状の持続に関係するようです。
幼児期と40~60歳代に発症する人が多く、患者さんは幅広い年齢層にみられます。
近年では咳喘息(せきぜんそく)と呼ばれる、せきのみの症状が強い喘息様の病気も増加しています。
原因
遺伝的素因というのは生まれつきもっている体質です。喘息の遺伝的素因はアトピー性素因であり、気道の粘膜が刺激に対して敏感に反応しやすいことです。この素因に何らかの原因物質が加わり、喘息症状が出現すると考えられています。
誘因には、アレルギー物質、気道への刺激の多い環境、薬剤などがあります。アレルギーが誘因の場合には、ハウスダストやダニ、ペットの毛などのアレルゲンが体内に侵入したことによるアレルギー反応として気管支喘息を発症します。ほかの誘因としては、刺激性の排気ガスや光化学スモッグ、たばこの煙、解熱剤や鎮痛剤などの薬剤、かぜ(感染症)、過労、ストレス、運動、天気や気圧の変化などがあげられ、いずれも気道が過剰に刺激され、自律神経系の乱れが喘息症状の出現に関係します。
症状
発作的に呼吸困難を伴うせきが起こります。呼吸をするとヒューヒュー、ゼーゼーといった音が出る喘鳴があったり、のどの違和感や胸の痛みなどを伴ったりする場合もあります。
夜間や早朝に発作が起きやすいため、就寝中や朝方に目覚めてしまうこや、運動時など呼吸が乱れることによって起きるせきが誘因となって発作を起こすこともあります。
慢性化(重症化)すると、明らかな発作がないときでも気道が狭窄し、日中の安静時でもせきや喘鳴が生じるようになります。酸素の取り込み不足におちいると、意識障害や皮膚などが青紫色になるチアノーゼを引き起こすこともあります。
検査・診断
まず問診で発作時の症状や頻度、家族歴や生活環境、誘因となる薬の服用の有無などを確認します。つづいて肺活量を測り呼吸機能を調べる肺機能検査、気道の過敏の程度を測定する気道過敏性試験、気道の炎症の程度を評価する呼気NO(一酸化窒素)検査、アレルゲンを特定するための血液検査や皮膚反応テスト、喘息以外の呼吸器疾患との判別や肺炎などの合併症の有無を調べるために胸部X線検査を行います。
症状に応じて心電図検査や心エコー検査、胸部CT検査、気管支鏡検査なども行います。結核などの除外を行うため、喀痰検査も重要になります。
治療
気管支喘息の治療薬は、発作が起きないよう毎日使用する長期管理薬(コントローラー)と、発作時に緊急的に使用する発作治療薬(リリーバー)の2つに分けられます。
長期的に症状をコントロールするためには、慢性の気道炎症を抑えるために吸入ステロイド薬が使われます。近年、喘息の気道炎症に関係する物質を特異的に抑えることにより喘息症状を改善させる分子標的治療薬が開発されています。一部の喘息患者さんには有用と考えられますので、特に慢性(重症)喘息の患者さんは専門医に相談してください。
発作時には、気管支拡張に即効性のある短時間作用型β2刺激薬(SABA)を吸入します。それでも症状が改善せず強い発作がつづくときには、医療機関でステロイド薬の全身投与、薬剤の点滴、筋肉注射などが追加され、酸素吸入が行われる場合があります。
チアノーゼや意識消失がみられる重篤な発作では、人工呼吸器が使用される場合もあります。
セルフケア
療養中
気管支喘息と診断されたら、医師の指導による治療を行うことが何よりも大切です。そのうえで発作を抑えるための重要なポイントは、ストレスをためないこと、十分な睡眠や適度な運動などで規則正しい生活を送ることです。
喫煙や肥満、過度の飲酒は、気管支喘息を悪化させる可能性があるため、禁煙と減量、節酒が必要となります。
予防
気管支喘息の予防には、原因となる物質をできるだけ排除し、免疫力を低下させないことが大切です。日常生活ではハウスダスト、ペットの毛、ダニ、カビなどアレルゲンを遠ざけるよう工夫し、喘息に移行しやすい感染症や花粉症などを悪化させないよう早めに治療することも大切です。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科特任教授
巽浩一郎
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