肺気腫はいきしゅ
最終編集日:2023/3/14
概要
肺気腫は肺にある肺胞の組織が壊れた状態になることです。肺胞は呼吸で取り入れた酸素と体内で発生した二酸化炭素の交換を行う器官です。肺胞が壊れると酸素と二酸化炭素の交換がうまく行えず、からだが酸欠(酸素不足)状態になります。せきや息切れだけでなく、全身にさまざまな疾患を及ぼすこともあります。肺気腫が悪化すると肺全体がふくらんで呼吸が思うようにできなくなり、さらに心臓にも影響を及ぼし、心疾患の発症にもつながることもあります。
最近は慢性閉塞性肺疾患(COPD)とまとめられることが多いのですが、COPDについては別項で解説しています。肺気腫は40~60代の喫煙男性に多く発症します。
原因
肺気腫のおもな原因は、COPDと同様に喫煙といわれています。40代以上に多いのは、長期間の喫煙習慣により肺の組織が徐々に壊されていくからです。受動喫煙によっても発症する可能性があるので、喫煙は自身だけでなく周りにも影響するということになります。
そのほか、大気汚染などによっても発症することがあります。なお、単一遺伝子の異常(α1-アンチトリプシン欠乏症)によって起こることもあるとされていますが、日本人ではまれです。
症状
肺気腫の症状が現れる場合、多くはCOPDを併発しています。症状もCOPDとほとんど同じで、せきやたん、息切れ、体重減少などが挙げられます。
長年の間に蓄積した肺構造の破壊から症状が出るので、肺炎になりやすく、肺やその血管系の障害により生じる肺性心などをきっかけに、せき、息切れが出始めます。
また、たんが出るのは上記に加え、慢性の気道炎症で過剰になった気道分泌物が原因です。
肺の機能が低下したため、呼吸による酸素の取り込みがうまく行えなくなり、階段を上るなどのちょっとした運動でも息切れが起きるようになります。呼吸をするときに大きなエネルギーを使ってしまうことで、体重減少もみられます。
なお、症状は徐々に現れるので、加齢によるものと勘違いする場合もあります。上記のような症状がある場合、とくに喫煙者は、早期の診断が求められるでしょう。
検査・診断
肺気腫の診断は喫煙歴などの問診に基づき、胸部X線検査やCT検査などの画像診断で肺の組織の状態を確認します。ただし、初期の場合、X線検査では見落とす可能性があるので、CT検査が有効です。CT検査であれば、肺気腫の程度がわかるとともに、ぜんそくなどほかの疾患との区別が可能となります。なお、肺気腫の症状の場合、COPDも疑われるため、X線検査などに加え、呼吸機能検査が行われることもあります。
以上に加え、血液検査などを実施し、総合的に判断します。
治療
一度壊れてしまった肺胞は元に戻ることはありません。しかし、進行を遅くすることは可能です。肺気腫の原因のほとんどが喫煙であるため、喫煙者である場合、治療の第一は禁煙の指導となります。禁煙しなければ、そのほかの治療を行っても効果は期待できません。
発症の初期段階では、たんの詰まりを抑えるため、気管支を広げる効果のある気管支拡張薬や気道の炎症を抑え、たんを切れやすくする薬を内服します。加えて、吸入の抗コリン薬やβ2刺激薬なども使用します。重症化している場合やぜんそくを併発した場合には、吸入ステロイド薬を使うこともあります。呼吸困難が強くなったら、抗生物質の点滴や利尿薬など、原因にあわせた治療が行われます。
薬物以外にもリハビリテーションを行い、呼吸訓練や運動療法、栄養療法を実施します。仮に重症化すると、呼吸によって十分な酸素を取り入れられなくなるので、酸素供給装置からチューブを通して酸素を吸入する酸素療法が必要です。肺気腫を部分切除する外科手術もありますが、日本ではほとんど実施されていません。
セルフケア
予防
喫煙者の場合は、禁煙が必須です。肺気腫の症状がある場合、かぜを引くとせきによって呼吸がさらに苦しくなるので、日頃から運動などでからだを鍛え、免疫力をつけてかぜにかからないように注意することが大切です。また、インフルエンザなどの感染症に罹患しにくくするために、感染症対策のワクチン(インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン)を接種することも推奨されています。
とくに適度な運動と適切な栄養をとることはほかの疾患を予防し、肺気腫を悪化させないことにも有効です。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授
巽浩一郎
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