小児ぜんそく
しょうにぜんそく

最終編集日:2023/3/14

概要

大人のぜんそくと同様に、肺に通じる気管支に慢性的な炎症が生じて、発作性の呼吸困難やせき、たんを生じます。ゼーゼーやヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)と呼ばれる症状が、夜間や早朝に出るのが特徴です。ただし、乳幼児は気道が細いので、一般のかぜでも前述のような症状が出る場合があります(ぜんそく様気管支炎と考えられており、小児ぜんそくとは異なります)。

乳幼児期からの発症が多く、ほとんどが6歳までに発症。12歳頃には大半が治療をしなくても症状が自然に消滅する寛解を迎えるといわれています。12歳の時点でぜんそくの症状がまだ残る場合には、成人型ぜんそくに移行する可能性が高いと考えられています。放置しないで、この時点での適切な治療が必要になります。

アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、アレルギー性鼻炎などアレルギー系の疾患があると、そのひとつとして小児ぜんそくが出やすいことが知られています。

原因

遺伝的な要素も否定できませんが、ほとんどが環境因子の影響で発症します。アレルゲンは、家庭内のダニやほこり、犬や猫の毛などです。また、たばこの煙も原因となるので、受動喫煙にも細心の注意が必要となります。

ぜんそくの患者さんの気道は、常にアレルギー性の炎症を起こしているので、敏感になっています。そのため、ダニやほこり、気温や気圧の変化などの外的ストレスにより気道が反応し、発作が起きるのです。

症状

症状は大人のぜんそくと変わりありませんが、幼児は症状をうまく伝えることができないので子どもの様子をきちんと観察することが肝要です。とくに乳幼児の場合は、ゼーゼーやヒューヒューといった音が聞こえにくいことがあります。泣いたり、不機嫌になることが多くなったら、とくに注意が必要です。早朝や夜間に発症することが多いのも特徴です。

ぜんそく症状が強くなると息を吐きにくくなり、立っていられずに座り込む場合があります。睡眠中では、胸がへこみ陥没呼吸になったり、眠れなくなって布団の上に座り込み、ぼんやりしていることもあるでしょう。子どもの活動の状況が変化したら、要注意です。

なお、これまで症状は、軽症・中等症・重症と分類されていましたが、現在では国際的な分類法を取り入れ、間欠型・軽症持続型・中等症持続型・重症持続型1・重症持続型2と分類されています。

小児喘息,小児ぜんそく

検査・診断

まず、子どもの問診に基づき、症状を確認します。また、ペットの有無や喫煙者の有無、家族のアレルギー歴など、家族の生活環境についてもヒアリングされるでしょう。小児ぜんそくと疑われた場合、ほかの病気と鑑別するために、次のような検査が行われる場合もあります。


●アレルギー検査……アレルギーが原因の場合、悪化因子を特定する

●呼吸機能検査……気道が細くなっているかどうかを調べる

●胸部X線検査……胸や気管支の構造に異常がないか調べる

●呼気NO(一酸化炭素)検査……気道に起きている炎症の度合いを調べる

●気道過敏性テスト……気道が刺激に対し、どの程度敏感になっているかを調べる

治療

発作を抑え、ほかの子どもたちと同様に活動できるよう、薬物療法や環境整備、運動療法が行われます。

ぜんそくの治療に使われる薬物には2種類あります。継続的に使用する吸入ステロイド薬と、発作時に使用し気道を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬です。ステロイドというと副作用を心配する人がいますが、ごくわずかな量であり、すぐに肝臓で分解されるので内服薬のような副作用は起こりません。

環境整備では、アレルギーの原因となる可能性のあるアレルゲンやそのほかの気管支の刺激因子をできるだけ排除するようにさせます。これは家庭で行うことです。

運動療法は、基礎的な体力をつけることで発作を重症化させないことをめざします。運動をすると発作が起こるのではとの心配もありますが、当初は過度な運動を避け、徐々に負荷を上げていくように指導します。

セルフケア

予防

徹底的な予防をすることが求められます。昨今のぜんそくの治療は、発作を抑えることから発作を起こさない環境を整えることに比重が移っています。軽症だから、発作が治まったからといって軽視しないことも重要でしょう。前述したように幼児は症状を訴えるのが苦手なので、軽い症状の場合、苦しさを伝えることがないかもしれません。徹底した予防を実現するためには、日頃の観察が大切になってきます。

発作のない日常の様子と症状の記録を付つけ、発作の前ぶれ、原因の特定、発作の経過などに注意します。記録をつけることで発作の前ぶれを知ることができ、早期の対応・重篤化の回避につながるのです。

また、親が子どもにできることのひとつは、ふだんから脈拍数を知っておくことです。ぜんそくの状態が悪くなると、通常は脈拍数が増えます。

監修

千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授

巽浩一郎

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