高尿酸血症
こうにょうさんけっしょう

最終編集日:2022/1/11

概要

高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超える状態と定義されています。通常、血液中の尿酸量はバランスよく保たれていますが、腎臓からの排泄量が少なかったり、反対に体内でつくられすぎたりすると、血液中の尿酸が増加します。尿酸が過剰になると、やがて体内で尿酸塩という尿酸の結晶がつくられ、これが関節に沈着すると痛風という急性の関節炎を発症することがあります。また、尿酸塩が腎臓に沈着すると、腎臓結石や尿路結石などの原因になります。

原因

高尿酸血症は、からだのなかで尿酸の産生が増加することによって起きる産生過剰型と、腎臓からの尿酸の排泄が減少することによって起きる排泄低下型に分類され、日本で多いのは排泄低下型だといわれています。

尿酸の排泄が低下する原因として、腎臓の機能低下や、利尿薬などの薬剤の使用などがあげられます。また肥満や脂質異常症糖尿病などで血中のインスリンが増えたり、高血圧などで体内に乳酸が増え尿が酸性化したりすると、尿酸の排泄が阻害されることがわかっています。

アルコールは、肝臓でのプリン体の代謝を増進して尿酸の産生を促すとともに、乳酸の代謝を阻害して体内の乳酸を増やし尿酸の排泄を低下させるため、過剰摂取に注意する必要があります。

症状

高尿酸血症そのものでは自覚症状がありませんが、痛風や腎臓結石などを発症すると症状が現れます。

痛風は、足の親指の付け根など小さい関節に生じることが多く、くるぶし、ひざ、アキレス腱などにも起こることがあります。発作時には、手足の関節が腫れて、熱感を伴う激しい痛みが生じます。最初の頃は1~2週間で自然に痛みはなくなりますが、その時点で適切な治療を行わないと何度も発作をくり返し、やがて関節の周囲などに尿酸塩が沈着して痛風結節となり、関節が変形してしまうこともあります。

痛風結節は、足の親指のつけ根の関節にできることが多いとされていますが、それ以外の手足の関節や、耳の軟骨、アキレス腱の周囲、皮下組織、さらには腎臓などの内臓に形成されることもあります。

尿酸塩が腎臓に沈着すると、痛風腎という腎機能障害が起きたり、尿酸塩を中心とする腎臓・尿路結石ができやすくなったりします。また、高尿酸血症や痛風は、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などに合併して起きることが多いため、脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患を併発することもあります。

検査・診断

血液検査の結果、尿酸値が7.0mg/dLを超えている場合は、高尿酸血症と診断されます。

痛風は、発作や痛風結節などの症状、血清尿酸値、関節液の性状などをもとに診断されます。進行状態を調べるため、腎機能検査や関節超音波検査、CT検査が行われることもあります。

腎臓・尿路結石の確認のために、尿検査、X線検査、超音波検査、CT検査などが行われます。また、合併症の有無を調べるために、腎機能や脂質、血糖、肥満度などを調べる検査、心電図検査や心超音波検査などが行われることもあります。

感染性関節炎や関節リウマチ、変形性関節症、偽痛風、外反母趾、骨折など痛風に類似する症状をきたす病気との鑑別を行うため、血液検査や画像検査などが併用されることもあります。

治療

痛風の治療は薬による治療が中心ですが、生活習慣の改善も重視されます。

●薬による治療

痛風発作を予感したときに服用するコルヒチンや、発作が起きたときに服用する非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質ステロイド薬などが用いられます。どの程度の血清尿酸値に対して尿酸降下薬の投与を開始するべきか、まだ結論は出ていません。痛風発作が複数回生じる場合、痛風結節、尿酸結石を伴う高尿酸血症では、薬物療法(薬による治療)で尿酸値を安定させることが必要と考えられています。尿酸値をコントロールするため、尿酸生成抑制薬や尿酸排泄促進薬が用いられます。

●生活習慣の改善

飲酒を含む食事因子が重要です。生活習慣の改善によって高尿酸血症の改善および痛風発作の抑制も期待できます。体重コントロールによって、肥満・高血圧・メタボリックシンドロームにおけるリスクを軽減する効果も考えられます。

また、脱水により尿酸値は上昇するので、尿酸塩の腎臓への沈着や腎臓結石の発症予防には尿を増やす必要があるため、水を飲む量を増やします。

さらに、酸性の尿をアルカリ化するために野菜や海藻類を多くとるようにします。食事療法によって酸性尿の改善がみられない場合は、重曹やクエン酸製剤などの尿アルカリ化薬が用いられます。

セルフケア

療養中

高尿酸血症や痛風と診断された場合は、医師の指示のもと、薬による治療や生活改善に取り組みます。高血圧症や脂質異常症、糖尿病、肥満などに合併している場合は、動脈硬化や心疾患の併発を予防するためにも、総合的な観点から治療に取り組むことが重要です。

治療につながる生活改善として、尿酸のもとになるプリン体(レバー、干物、ビールなど)の摂取を減らし、アルコールのとりすぎに注意しましょう。

予防

高尿酸血症自体には自覚症状はありません。定期的に健診を受けて血中の尿酸値をチェックしましょう。

監修

小田原循環器病院 循環器内科院長

杉薫

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