頸椎椎間板ヘルニア
けいついついかんばんへるにあ

最終編集日:2023/5/24

概要

頸椎(頸〈首〉の骨)は脊椎(脊柱)を構成する骨の一部で、7個の骨と、骨と骨の間の椎間板でできています。椎間板はある程度の弾力性をもつ組織で、上下の骨をつなぎ、動きを調整し、骨同士に摩擦が起こらないようにクッションのような役目をしています。椎間板は外側を線維輪という線維組織に覆われていますが、何らかの原因で線維輪に亀裂が入ると、なかの髄核という軟らかい組織が外に脱出してしまいます。この状態を頸椎椎間板ヘルニアと呼んでいます。背中側に脱出することが多いため、背中側に位置する神経根や脊髄を圧迫して、さまざまな症状をひきおこします。椎間板ヘルニアは30~50代に好発します。

原因

頸椎の加齢変化、不適切な姿勢をつづけたこと、遺伝的要因、外傷などが誘因として挙げられていますが、原因はまだ特定されていません。

症状

飛び出した髄核が神経根を圧迫する場合と脊髄を圧迫する場合で、異なる症状が現れます。


●神経根を圧迫した場合(神経根症)……片側の肩甲骨周辺の痛みやしびれなどの症状から始まり、肩、頸、肩甲骨、うで、手指など上肢全体に激しい痛みやしびれ、脱力・筋力低下が起こります。痛むほうに頸を傾けると症状は強くなります。

●脊髄を圧迫した場合(脊髄症)……手指の感覚異常と細かい作業ができないという症状で始まることが多いようです。進行すると、歩行障害(ふらつき)、下肢の感覚異常が現れ、排尿困難を伴うこともあります。

頸椎をつなぐ役割の椎間板。その髄核が脊髄や神経を圧迫する
頸椎をつなぐ役割の椎間板。その髄核が脊髄や神経根を圧迫する

検査・診断

頸部の神経学的検査として、ジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経根を刺激するテストを行い、痛みやしびれの現れ方を調べます。X線検査と頸椎MRI検査で頸椎の変化、脱出した髄核の程度、脊髄や神経根の圧迫の度合いなどを評価して診断をつけます。MRI検査での評価がむずかしいケースもあり、その場合は造影剤を用いたCTミエログラフィー検査が必要になります。

なかには症状の現れ方と画像検査での病変部位が一致しないような場合もあり、慎重な診断が求められることもあります。

頸椎症、脊柱管狭窄症などとの鑑別診断も行います。

治療

脱出した髄核は、多くの場合自然と吸収されて小さくなり、同時に症状が軽減します。治療は、保存療法と手術の2つがあります。


●保存療法

多くの場合、積極的な治療を行わなくても、2~3週間で症状が軽快し始めます。うでや手の症状は、痛み、筋力低下、しびれの順に軽減します。多くは1~3カ月で改善されます。症状が強い場合は、安静を保ちながら消炎鎮痛薬や筋緊張緩和薬、神経障害性治療薬の服用(内服、外用)、理学療法(頸椎牽引療法、温熱療法、徒手療法など)、肩回りの軽い体操、入浴などを行い、症状を和らげます。しびれが強い場合はビタミンB製薬を服用します。痛みの神経ブロックを行うこともあります。

●手術

保存療法で効果がみられない場合や、3カ月以上症状がつづく場合、脊髄症状である歩行障害や排尿障害がすでに現れている場合には、手術を検討します。脊髄圧迫症状である麻痺や排尿障害を長く放置すると手術をしても回復しません。手術内容は、脱出して神経根や脊髄を圧迫している椎間板を取り除き、代替物を挿入します。皮膚を大きく切開し直視で操作する従来からの手術法と、内視鏡を用いた手術法があります。椎間板の代替物を入れず、除圧だけを行うこともあります。入院は2週間前後ですが、歩行障害などがある場合は術後のリハビリテーションのために入院が長引くこともあります。

セルフケア

療養中

●受診について

頸椎椎間板ヘルニアは、鍼灸・整体・マッサージなどで漫然と過ごさず、上肢のしびれや痛みがつづくようであれば、整形外科や外科を受診しましょう。とくに脊髄症では、適切な時期に治療を受けないと手術を行っても症状が改善されない場合もあります。

予防

予防にもっとも大切なことは、よい姿勢を心がけることです。10㎏近い重量の頭部を支えることから起きているときは、頸椎椎間板には常に大きな圧力がかかっています。そのときに下を見るような姿勢がつづくと、椎間板には後方に押し出される力がかかり、ヘルニアになる危険性が高まります。スマートフォンの使用時や読書の際には、タブレットや本をできるだけ前方の高い位置に持ち上げて見るような習慣をつけましょう。

監修

東馬込しば整形外科院長

柴伸昌

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