肩関節脱臼かたかんせつだっきゅう
最終編集日:2022/5/13
概要
肩の関節に過剰な力が加わることによって、肩の骨が正常な位置から完全に外れてしまう状態です。脱臼は、骨のずれの程度によって脱臼と亜脱臼(あだっきゅう)に区別され、外れた関節を自分で戻せる程度だと亜脱臼、医師に戻してもらわなければならないものを脱臼といいます。スポーツや転倒などで、うでを後ろに強く引っ張るような力が加わって発症することが多く、一度発症すると何度もくり返すことがあります。
原因
うでを後ろに強く引っ張られたときや、肩を激しくぶつけたとき、手をついたりひねったりしたときなど、肩に強い衝撃を受けたときに発症します。肩に衝撃を受けやすいスポーツの現場で起きやすく、ラグビー、アイスホッケー、柔道、レスリング、スキー、スノーボードなどがその例です。日常生活でも転倒時などにみられます。
症状
肩関節脱臼時の痛みのほとんどは激烈で、うでの上げ下ろしはまったくできず、初回受傷者の多くは受傷していないほうのうでで脱臼したうでを支えます。自分で整復することはほぼ不可能です。肩の形が左右で異なっていることで、脱臼を予想できますが、骨折との鑑別も重要です。脱臼によって神経が圧迫され、肩やうで、指などにしびれが生じる場合もあります。高齢者の場合、脱臼しても強い痛みを訴えないことがあり、うでを動かさないことに家族が気づいて診断に至ることもあります。脱臼が整復されると、痛みは劇的に軽減します。肩関節脱臼は一度起こすと、その後もくり返すことが多く、これを反復性脱白といいます。とくに10代における初回脱臼は、反復性に移行しやすい傾向にあります。最初の脱臼では強い外力がきっかけとなるのにくらべ、反復性ではうでを上げるだけで、あるいはくしゃみや寝返りなどの日常の何気ない動作をきっかけに起こることもあります。
●肩関節脱臼で多くみられる症状
・肩の動きに制限がかかって動かせない
・肩を動かすと強い痛みを感じる
・肩が変形しているため、左右の高さが異なる
・肩やうで、指にしびれを感じる
検査・診断
病院であれば、初回の肩関節脱臼の場合、その診断は診察とX線検査で容易です。しかし、反復性の場合、脱臼も容易に起こる代わりに整復も容易であることが多く、自然に脱臼が整復されると、診察時には痛みは軽減しています。その際は問診が重要で、脱臼の方向などは問診によって明らかになることがあります。どのような状況で、何をしているときに痛くなったか、どの方向にうでが持っていかれたかなど、発症時のくわしい状況を確かめることができればそれに越したことはありません。
患部を触って確かめる触診や、患者さんの肩の高さや形を診る視診も、正確な診断には欠かせません。そのうえで、上腕骨や肩甲骨の関節窩骨折や骨頭の骨折などを評価するために、X線検査が行われ、くり返す脱臼の場合はCT検査、MRI検査などの画像診断を実施します。肩関節脱臼は、前方に脱臼することが多いものの、まれに後方脱臼することもあります。後方脱臼は、X線検査のみでは明らかな脱臼と診断できないこともあり、CT検査が必要となることもあります。
治療
肩関節脱臼の治療ではまず、肩関節を正しい位置に戻す整復を早急に行います。その後は、三角巾や副木などで肩関節が動かないように固定して、肩関節を安静にすることが優先されます。通常は、3週間程度の固定期間を経て、リハビリテーションで筋力の回復・強化を図ります。脱臼の程度や症状によっては、手術が選択されることもあります。現在、脱臼の原因となっている組織の修復は、超小型のカメラを関節内に挿入して行う鏡視下手術が主流となっています。
セルフケア
病後
肩関節脱臼は、一度脱臼したために肩関節が脱臼しやすい状態になり、その後も日常生活でくり返し脱臼する反復性脱臼が起こる可能性があります。また、反復性脱臼の患者さんの場合、日常生活の何気ない動きでも脱臼のリスクがあるので、症状によっては専門医としっかり相談のうえ、対処法を決めましょう。
監修
東馬込しば整形外科 院長
柴 伸昌
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