変形性頸椎症へんけいせいけいついしょう
最終編集日:2023/6/2
概要
首の骨である頸椎の変形によって起こる病気です。おもに加齢によって生じた椎間板や椎間関節に、変性や変形が生じた状態です。椎間板の変性に伴って生じる骨棘(こっきょく:骨の一部が骨端部でとげ状になる)や関節の変形によって生じる脊柱管の狭窄により、まれに脊髄や神経を圧迫することがあります。頸椎には頭やうでの重さなど日常生活で常に負担がかかっているため、年齢とともに誰にでも起こる症状です。個人差はありますが、頸部周辺の慢性の痛みや首やうで、肩や手指のしびれ、痛み、さらには体幹や下肢の痛みやしびれ、歩行障害などさまざまな症状が現れます。
原因
頸椎は直立二足歩行の人間にとって、もっとも負担がかかりやすい骨です。首は椎骨(ついこつ)という7個の骨で形成され、それぞれの椎骨の間には衝撃を吸収し摩擦を防ぐ椎間板(ついかんばん)があり、これがクッションのような役割を果たしています。椎間板が加齢とともに弾力を失って潰れてくると、椎骨同士がぶつかりあって骨が棘のように変形する骨棘が形成されます。また、後方にある脊椎関節にも変形が生じてきます。これは加齢によって生じる変形性関節症と似ています。これらの椎間板の変性や関節の変形が頸部痛の原因となります。骨棘などによって脊髄や神経を圧迫することや、脊髄の通る脊柱管(せきちゅうかん)が狭くなることなどが上肢、さらには体幹や下肢の症状の原因となります。加齢に限らず、スマ―トフォンの長時間の使用やデスクワークなどで姿勢が悪くなることもひとつの原因とみられています。
症状
軽度の場合は肩こりや首の後ろの痛み、首の重だるさ、背部痛などが起きます。ほとんどは安静にしていれば治まる症状です。変形性頸椎症において神経が圧迫される場合、脊髄が圧迫される頸椎性脊髄症と、脊髄から分岐する神経が圧迫される頸椎性神経根症の2つに大別され、それぞれ症状も違ってきます。
●頸椎性脊髄症の症状
圧迫されている部位より少し下の領域に比較的広範囲にわたり、痛み、しびれ、脱力などが現れる
●頸椎性神経根症の症状
症状はやはり、痛み、しびれ、脱力ですが、症状が出る範囲は首、肩、うでなどに限られる。また、左右のどちらかに現れる
検査・診断
頸椎の変形と神経圧迫の程度を判断するためX線やMRIなどの画像検査が行われます。
●X線検査
加齢による骨棘や脊柱管の狭窄などを調べる
●MRI検査
頸椎の変形の状態と、変形による脊髄や神経の状態を調べる
治療
変形性頸椎症の多くは首を安静にすることで症状が改善するため、薬物療法や保存的療法で治療するケースがほとんどです。症状が悪化したり改善がみられなかったりする場合は、手術療法も検討されます。
●保存的治療
安静にすること、内服薬の処方、頸椎カラーによる首の固定などの治療が行われる
●手術療法
加齢などによって症状が悪化している場合はMD法という手法で行い、変形した椎間板と神経や脊髄を圧迫している骨棘を取り除く。椎間板を摘出した部位には、セラミック人工骨が移植される
セルフケア
予防
加齢による変形性頸椎症は高齢者の多くに起こるもので、深刻に捉えすぎる必要はありません。同じ姿勢を長くとるような場合は、時々休んでからだをほぐす、軽いストレッチをするなど、日常生活で無理をしないように気をつけましょう。症状がつらいときには、横になって安静にすることが効果的です。また、症状が長引くなどの場合は専門医に相談し、検査やアドバイスなどを受けるとよいでしょう。
監修
東馬込しば整形外科 院長
柴伸昌
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