肥満症
ひまんしょう

最終編集日:2025/12/19

概要

肥満とは、皮下や内臓に脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMIが25以上の場合を指します。とくに病気や薬の副作用が原因ではない肥満を原発性肥満といい、通常「肥満」といえば、エネルギーの摂取と消費のアンバランスによる原発性肥満を指します。

肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、将来的に健康障害を発症する可能性があるなどの条件を満たす場合を「肥満症」といいます。日本肥満学会の診断基準では、健康障害を伴う肥満だけでなく、内臓脂肪蓄積が高度で、将来の動脈硬化疾患などのリスクが高い場合も肥満症に含まれます。


原因

肥満は、エネルギーの摂取過多(食べすぎ)と、消費不足(運動不足)が主な原因です。肥満関連遺伝子の関与も指摘されていますが、多くは遺伝というよりも、生活習慣(食習慣・睡眠・身体活動・ストレスなど)が強く影響します。

症状

肥満症には、肥満に起因する健康障害の合併が伴いますが、健康障害には、内臓脂肪蓄積によるもの(脂肪細胞の質的異常)と、皮下脂肪蓄積によるもの(脂肪細胞の量的異常)の両面から生じます。

●脂肪細胞の質的異常により起こる健康障害

高血圧症、脂質異常症、耐糖能障害、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝(MAFLD/NASH)、肥満関連腎臓病、月経異常および妊娠合併症など

●脂肪細胞の量的異常により起こる健康障害

睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、整形外科的疾患(変形性膝関節症、腰痛)など

●関連する健康障害

胆石症、静脈血栓症、肺塞栓症、気管支ぜんそく、皮膚疾患(黒色表皮腫、間擦疹)、悪性疾患(大腸がん、乳がん、子宮内膜がんなど)


検査・診断

肥満の有無は、BMI〔体重㎏÷(身長m×身長m)〕の数値で判定します。日本ではBMIが25以上の場合に肥満とされます。

肥満症は以下の基準で判定されます。

・肥満に加えて、関連する健康障害を有する場合

・または内臓脂肪型肥満(内臓脂肪面積100cm²以上)で将来、健康障害を発生するリスクが高い場合


腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)は内臓脂肪型肥満の簡易指標として用いられます。

なお二次性肥満症が疑われる場合には、血液検査(ホルモンの値などを調べる)、染色体検査(遺伝性の病気がないかを調べる)、画像検査(脳腫瘍などの検査)などを行う場合があります。


治療

治療の基本は、食事療法・運動療法・行動療法です。特に内臓脂肪型肥満では、3~5%の体重減少でも脂質や血糖などの数値の改善が期待できます。近年は、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬が登場し、食欲の調整と体重減少に対する効果が高い治療選択肢として使用されており、保険適応となっています。摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくして、それを長期間継続することで、体脂肪を減少させます。

セルフケア

予防

日本人は内臓脂肪型肥満が多く、わずかな体重増加でも糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを発症しやすい一方で、体重を3~5%減らすだけで、これらのリスクを下げられるといわれています。

糖質制限は過度に行うとリバウンドや健康被害のリスクがあるため、極端な制限ではなく、継続できる食事療法が推奨されます。必要に応じて、専門医や管理栄養士の指導を受けながら取り組むことが重要です。


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監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣