ウェルニッケ脳症
うぇるにっけのうしょう

最終編集日:2023/3/28

概要

ビタミンB1(チアミン)の欠乏から起こる代謝性の脳症であり、意識障害、眼球運動障害、ふらつきなどの失調が特徴です。脳のMRIでも、脳幹部などに高信号(信号強度が高く画像に白っぽく表示される)がみられることもあり、さまざまな症状が現れます。男性のほうが若干、罹患率が高いという報告もあります。

原因

おもにアルコール依存症や偏食、または妊娠によるつわりなどによって、ビタミンB1の摂取が不足することが原因です。そのほか、他疾患で高カロリー輸液を受けていると、ビタミンB1の需要が高まるために相対的に不足し、ウェルニッケ脳症を起こすことがあります。極端なダイエットによって発症するケースもあるため、注意が必要です。

症状

意識障害、眼球運動障害(眼振、斜視など)、ふらつきや歩行障害などの失調が3主徴とされています。重症化すると、せん妄、見当識障害、記銘力障害などを伴う「コルサコフ症候群」に移行し、昏睡や死亡に至ることもあります。コルサコフ症候群に陥ると、一般的に治癒はむずかしいといわれています。

検査・診断

アルコールの摂取状況、食生活、既往歴などを問診で確認し、血液検査で血中のビタミンB1濃度を調べます。通常は、ふらつきなどの3主徴がすべて現れるケースは少ないため、3主徴のうち2つが認められれば、この病気を視野に入れます。意識障害、眼球運動障害歩行障害などを伴う重症の場合には、脳のMRI検査を行います。

治療

ビタミンB1の補充療法が行われます。初期には点滴で、症状がある程度改善したら経口で投与されます。タイミングを逃すとコルサコフ症候群のリスクが高まるため、注意が必要です。アルコール多飲が原因の場合は、ビタミンB1の補充療法の効果を高める目的で、マグネシウムの投与が行われることもあります。

セルフケア

予防

アルコール依存症や偏食を改善すること、無理なダイエットをしないことが大切です。

ウェルニッケ脳症のリスク因子をもつ人に歩行障害や意識障害が現れたら、速やかに受診をすすめ、適切な治療を受けるように促しましょう。

監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣

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