やせ症
やせしょう

最終編集日:2023/3/22

概要

厚生労働省が示す「やせ」の基準は、BMI〔体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)〕が18.5未満とされています。

やせは「摂取エネルギーの不足(栄養不足)」「摂取したエネルギーを十分に活用できない(吸収・消化の障害)」「消費エネルギーが過剰、あるいは摂取エネルギーの消失」などの状態から起こります。がんや消化器の病気、摂食障害などの心の病などの他疾患からひき起こされるもの、加齢によるもの、服用している薬剤によるものなど、原因は多岐にわたります。また、行きすぎたダイエットの結果、やせを伴うものもあります。

成人の外来患者の約8%に体重減少がみられるといわれます。

原因

やせが起こる病態によって、次のような原因が考えられています。

●摂取エネルギーの不足

消化器の病気、歯科・口腔疾患、肝臓や腎臓の病気、電解質異常、内分泌異常、うつ病、がんなどで摂食が不十分・食欲不振、加齢による食欲低下、摂食障害、過剰なダイエットなど

●摂取したエネルギーを十分に活用できない

慢性膵炎、炎症性腸疾患、糖尿病、肝硬変、加齢による消化・吸収機能の低下など

●消費エネルギーが過剰、摂取エネルギーの消失

発熱、甲状腺機能亢進症、がん、感染症、外傷・熱傷、寄生虫疾患、摂食障害による下剤の乱用や自己誘発性嘔吐、ダイエット目的の過剰な運動など


そのほか、薬剤が原因で、食欲不振や味覚障害、嚥下障害などが起こり、やせにつながることがあります。

症状

低栄養を伴う場合が多いため、貧血、寒がり、冷え性、皮膚の乾燥、倦怠感、無月経、傷が治りにくいなどが自覚症状として現れます。寝たきりの高齢者では褥瘡(じょくそう:床ずれ)の発症・悪化なども起こります。

原因疾患がある場合は、それぞれの疾患に起因した症状を伴います。例えば、糖尿病があれば口渇や多飲、多尿などが、消化器疾患があれば吐き気・嘔吐、下痢、血便、腹痛などが、甲状腺機能亢進症であれば頻脈、多汗、イライラなどが、うつ病であれば不眠、意欲の減退などがみられます。

検査・診断

BMI 18.5未満が判定の基準になっています。また、標準体重の-20%以上のやせ、あるいは標準体重の-20%未満のやせでも6カ月で-5%以上の体重減少がみられる場合には、病的なやせを疑います。

脈拍や血圧など、バイタルサインのチェックを行い、血液検査で貧血の有無や電解質のバランス、肝機能、腎機能などを精査します。加えて、尿検査、胸部・腹部X線検査などで、全身状態を調べます。うつ病や摂食障害が疑われる場合には、SDS(うつ病自己評価尺度)やSRQ-D(軽症うつ、仮面うつの自己診断シート)、EAT-26(摂食障害の質問票)といったスクリーニングテストを行います。

患者さん自身は原因疾患の存在に気づいていない場合があるため、原因特定のための検査も並行して行われます。

治療

やせを起こしている原因疾患の治療が第一になります。並行して、栄養状態の改善を行います。高カロリーの栄養補助食品などを利用したり、場合によっては点滴や胃ろうなども検討されます。食事内容や生活リズムの見直しなども行われます。

セルフケア

予防

急激にやせてきた場合には、重篤な病気が原因かもしれません。目安は、ダイエットや食事制限をしていないのに半年~1年で5㎏以上の体重減少。体重だけでなく、いつも着ている洋服が大きく感じられる・余る、女性の場合は月経が不規則になるなどがみられたら、体重の変動の有無を確認しましょう。


女性では、やせがあると不妊につながりやすく、妊娠しても低体重児のリスクが高くなります。ダイエット目的での過剰な摂取エネルギーの制限や、運動は控えるべきです。また、高齢者では、サルコペニア・フレイルのリスクが高くなり、ひいては寝たきりや認知症などにつながりやすくなります。周囲が体重減少に早めに気づいてあげることも必要です。

監修

医療法人青泉会下北沢病院 糖尿病センター長

富田益臣

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