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胸膜肥厚
きょうまくひこう

最終編集日:2025/2/7

概要

肺を包む膜(胸膜)が異常に厚くなった状態を指します。胸部の画像検査で見つかることがほとんどで、肺の一番上の「肺尖部」と呼ばれる部分に起こりやすいとされています。胸部CT検査を行うと、65歳以上の高齢者では肺尖部の胸膜肥厚を認める確率が高くなっています。多くは小児期の肺結核の痕跡と想定され、心配はいりません。

原因

胸膜肥厚は、以前に結核菌などの細菌感染が起きて肺や胸膜が炎症を起こし、それが治癒したあと(陳旧性)ととらえていいでしょう。感染時の炎症が自然に、あるいは抗菌薬などの薬物治療によって治り、その部分の組織が硬く厚くなって残っていると考えられます。

しかし新たな肺結核や悪性胸膜中皮腫、石綿肺などでも胸膜肥厚が現れることがあるため、注意が必要です。


症状

通常、胸膜肥厚が軽度であれば症状はありません。しかし重度になると、肺が空気でふくらみにくくなるため、呼吸が浅く速くなって息苦しさを感じます。

肺結核の場合には胸膜肥厚による症状はほぼありませんが、発熱、寝汗、倦怠感せきたん血痰、喀血などの症状が現れる場合があります。悪性胸膜中皮腫の場合には、悪性細胞の胸膜への浸潤(しみこむように広がること)により、胸痛、せき、胸水貯留による呼吸困難などが起こります。石綿肺では、胸膜肥厚斑(胸膜プラーク)と呼ばれる特徴的な画像所見が現れますが、通常はそれに伴う自覚症状はほとんどありません。


検査・診断

健康診断や他疾患の胸部X線検査で偶然見つけられることがほとんどです。陳旧性のものかどうかを的確に診断することが大切です。

自覚症状の有無、肥厚した胸膜や周囲の状態、胸水の有無、病歴などから陳旧性のものと診断されない場合は、胸部CT検査、胸水検査、肥厚した胸膜の生検などでさらに精査します。


治療

陳旧性のものでは治療は必要ありません。胸膜肥厚が進行性、活動性の場合には、原因疾患の治療を行います。

セルフケア

療養中

胸膜肥厚は心配のいらないものがほとんどですが、健康診断などで異常を指摘されたら、内科、あるいは呼吸器内科を受診して、ほかの疾患が隠れていないかなどを調べてもらいましょう。

心配のないものとわかった後は年に1回程度、健康診断などで引き続き様子をみていきます。肥厚の程度が変化したり、新たな肥厚部分が現れたり、せき・たん、胸痛など自覚症状が現れた場合には、くわしい検査を受けるようにしましょう。


監修

千葉大学医学部附属病院 呼吸器内科 真菌医学研究センター 特任教授

巽 浩一郎

本サービスに掲載される情報は、医師および医療専門職等の監修の元、制作しております。監修者一覧および元となる情報はこちらからご参照ください。
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