胸膜炎

きょうまくえん

最終編集日:2022/5/15

概要

胸膜は、肺を収めている胸腔という空間の壁を覆う膜です。胸腔の内側の壁と横隔膜の上表面を覆う壁側胸膜と、肺の表面を覆う臓側胸膜の2枚があります。この2枚の膜の間のわずかな空間を胸膜腔と呼びます。胸膜腔には胸水という少量の液体があって、肺が呼吸によって伸縮する際の摩擦を減らす潤滑油のような働きをしています。胸膜炎は胸膜腔に炎症が起きた病態を指します。多くは片側の肺に起こります。胸膜腔に炎症が起こると、肺から体液が滲出して(にじみ出て)くるため、胸膜腔に水がたまる「胸水」がみられます。

原因

細菌性胸膜炎、肺炎、結核などの感染性疾患、肺がん、悪性リンパ腫、胸膜中皮腫などの腫瘍(がん)によるもの、膠原病、血管炎などの自己免疫系疾患、肺塞栓症、薬剤性などさまざまな疾患が原因となります。がん性胸膜炎と結核性胸膜炎で60~70%を占めるとされています。

症状

感染症が原因になる場合は、発熱、胸痛、せき、倦怠感などが現れます。胸痛は息を吸ったときに強くなります。腫瘍が原因の場合は、倦怠感などの全身症状、および胸痛などの局所症状が現れ、胸水が増加すると呼吸困難が起こります。

健康な肺にも胸水が少しみられるが炎症が起きると胸水が増える(右)
健康な肺にも胸水が少量みられるが(左)、炎症が起きると胸水が増える(右)

検査・診断

吸気時に悪化する胸痛は胸膜炎に特徴的な症状で、これがあれば胸膜炎を疑います。胸部X線検査とCT検査で、胸水やガス産生の有無、肺の状態をくわしく検査します。全身状態が検査に耐えられるようであれば、超音波ガイド下の胸腔穿刺で胸水と胸膜の一部を採取します。胸水貯留の程度、胸水の性状、生化学的検査、細菌検査、細胞診などを行い、起因菌あるいは原因疾患を特定します。

なお、胸水が左右両肺に貯留している場合は、心不全や腎不全が原因であることが多く(例:心不全に伴う胸水貯留など)、炎症によるものではないため、胸膜炎と診断されることはあまりありません。

治療

胸膜炎を起こしている原因疾患の治療が基本になります。そのうえで、感染を起こしている場合には、起因菌にあわせた抗菌薬を投与します。また、利尿薬を用いて胸水の排出を促します。

胸膜が厚くなっている、胸水量が多い、胸水が部分的に塊を形成している(胸水の被包化)ような場合には重症と考え、必要に応じて胸水を体外に排出させる胸腔ドレナージや、胸膜腔を薬剤で癒着させて胸水がたまるスペースをなくす胸膜癒着術などを行います。また、胸腔にうみがたまる膿胸を起こして3カ月以上経っている場合は、胸腔鏡下での手術が行われます。胸膜炎自体の治療期間は2週間前後、重症の場合は約1カ月とされていますが、原因疾患によっては慢性化するものや、難治性のものもあって、さらに経過をみる必要があるケースも少なくありません。

監修

千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授

巽浩一郎

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