胸水きょうすい
最終編集日:2023/10/20
概要
肺は胸壁に囲まれた胸腔という空間のなかにあり、外側は「臓側胸膜」という薄い膜に覆われています。胸膜は胸壁の側にもあり「壁側胸膜」と呼ばれます。臓側胸膜と壁側胸膜の間(胸膜腔)には「胸水」という体液があって、潤滑液の働きをしています。10~20mLが基準値ですが、過剰にたまった状態を「胸水」あるいは「胸水貯留」と呼んでいます。
胸水の性状の違いによって、滲出性胸水(胸水中にたんぱく質が多く含まれる)と漏出性胸水(たんぱく質の含有量は少ない)に分けられます。
原因
胸水は何らかの疾患が原因で起こります。呼吸器系の疾患だけでなく、循環器、消化器、婦人科疾患、腎疾患、自己免疫疾患、感染症、がんなどでも胸水がみられ、原因疾患は多岐にわたります。
●滲出性胸水……肺炎、肺塞栓症、がん、膵疾患、ウイルス感染、肺結核、自己免疫疾患などが原因になります。
●漏出性胸水……心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群などが原因として挙げられます。
症状
胸水の症状として、発熱、せき・たん、胸痛、倦怠感、呼吸困難などが現れます。胸水が大量になると、呼吸不全や全身状態の低下がみられます。一方、胸水が少量の場合は症状がみられない場合も少なくありません。そのほか、原因疾患による症状を伴います。
検査・診断
聴診と打診でおおよその見当がつけられます。確定診断には、胸部X線検査、CT検査、超音波(エコー)検査が有用とされています。
既往症などの問診で原因疾患が推測できますが、原因の特定のために胸腔穿刺(胸腔に針やチューブを差し込む)を行い、胸水を採取して、性状の確認(血やうみが混じった血胸、膿胸でないかなど)、生化学検査、細菌学的検査、病理細胞診を行います。診断には「Lightの基準」という診断基準が用いられます。
治療
まず、原因疾患に対する治療が行われます。
胸水が少量の場合は、経過観察、あるいは利尿薬を用いて排出を促すなどが行われます。胸水が大量の場合や、発熱や胸痛などの症状が強い場合、利尿薬を用いて3日経っても貯留量にあまり変化がみられない場合には、胸腔穿刺を行って胸水の排出を図ります。
がんなどが原因で再発しやすい場合には、胸膜癒着術が検討されます。胸膜癒着術は胸腔に医学用の糊のような薬剤を注入して、胸膜を癒着させる方法です。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授
巽浩一郎
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