排尿障害
はいにょうしょうがい

最終編集日:2023/5/16

概要

尿は腎臓でつくられ、尿管を通って膀胱に流れ込みます。尿をためるために膀胱排尿筋を緩んだ状態に保ちつつ、尿がもれないよう尿道括約筋が収縮します。これが“蓄尿機能”です。尿意を感じて排尿を意図すると膀胱排尿筋は収縮し、尿道括約筋が緩んで尿が排出されます。これが“排尿(尿排出)機能”です。

蓄尿機能と排尿(尿排出)機能の排尿サイクルに異常が生じた状態が排尿障害です。頻尿、尿失禁、排尿困難、尿閉などの症状があり、生活の質を著しく低下させるといわれています。

原因

排尿障害の原因疾患には、おもに以下のものがあげられます。


蓄尿障害は、膀胱に尿が十分たまっていないのに膀胱排尿筋が収縮し、尿道括約筋が緩み、尿を十分にためることができない状態をいいます。この原因として考えられるのは過活動膀胱、肥満などの生活習慣病、神経因性膀胱(脊髄疾患、脳血管疾患など)、間質性膀胱炎、骨盤底筋群の緩み、軽度の骨盤臓器脱、膀胱炎、膀胱結石などです。


排出障害は、膀胱排尿筋の収縮力が弱かったり、尿道が狭くななったりして尿の排出を十分に行えない状態です。この原因には、前立腺肥大症、神経因性膀胱(脊髄損傷、糖尿病など)、重度の骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱)、骨盤内臓器の手術後(直腸がん、婦人科がん)などがあります。


症状

排尿障害(畜尿障害・排出障害)にともなう症状は下部尿路症状と総称されており、その症状は多岐にわたります。


蓄尿障害には症状によって、次のような種類があります。

日中起きている間に8回以上排尿する「昼間頻尿」、夜間睡眠中に1回以上排尿のために起床する「夜間頻尿」、突然抑えきれない尿意を感じ、あわててトイレに駆け込む「尿意切迫感」、意思とは関係なく尿がもれる「尿失禁」などです。

さらに尿失禁は、せきやくしゃみ、重いものをもちあげたときに尿がもれる「腹圧性」、尿意が強いため我慢できずに尿がもれてしまう「切迫性」、腹圧性と切迫性の症状を併せもつ「混合性」、膀胱などは正しく機能しているのにトイレまでの移動や脱衣に時間がかかることで失禁を起こす「機能性」、十分排出できず膀胱内に残った尿がぼとぼとと溢れ出てくる「溢流性」などに分かれます。


また、排出障害には次のような症状があります。

尿の出始めが出づらい「排尿遷延」、尿の勢いが弱くなる「尿勢低下」、尿が2本に分かれる・飛び散る「尿線分割・尿線散乱」、尿線が途切れる「尿線途絶」、いきまないと排尿できない「腹圧排尿」、など、こちらも多岐に渡ります。

排尿後まだ膀胱内に尿が残っている感じがする「残尿感」、排尿をして下着をつけたあとに、残った尿が少しもれてくる「排尿後尿滴下」は排尿後症状として分類されています。


検査・診断

どのような障害が起こっているかを把握したうえで診断が行われます。

初診時にはとくに詳細な問診を行います。アンケートを用いた症状の評価を行い、自宅での排尿習慣を把握するため、排尿時間・排尿量・飲水量・失禁の有無などを3日間程度記載してもらう排尿日誌を患者に渡すこともあります。

次に尿検査で膀胱炎やがんなどの悪性腫瘍の有無を確認し、血液検査で腎機能障害の有無や、男性では前立腺がんの可能性がないか、腫瘍マーカーのPSA(前立腺特異抗原)を測定します。超音波検査、尿流動態検査が行われることもあります。


治療

原因や症状の程度などに応じて、生活習慣の見直し、行動療法、薬物療法、手術などの治療法が決まります。

●生活習慣の見直し

肥満、糖尿病、水の飲みすぎ、食べすぎ、喫煙、便秘といった生活習慣は排尿障害の発症・悪化の原因となります。そのため減量(食事制限、運動)、過剰な水分や塩分摂取をしない、禁煙、便秘の改善などが指導されます。

●行動療法

骨盤底筋群の収縮力を増強させる骨盤底筋体操や、排尿を我慢し頻尿を改善させる膀胱訓練などが行われます。

●薬物療法

排出障害改善薬としてαアドレナリン遮断薬や、蓄尿障害改善薬として尿失禁や異常な尿意を改善する抗コリン薬、β3受容体作動薬、漢方薬などが処方されます。

●手術

これらの治療を行っても効果が出ない場合にはボツリヌス毒素の膀胱壁内注入や手術も検討されます。


セルフケア

療養中

排尿障害の原因となっている病気があれば治療を行い、排尿を気にすることなく過ごす毎日を目指して、生活習慣を見直し、骨盤底筋体操や膀胱訓練を続けましょう。生活の質を落とさないよう、地道に努力することが大切です。

監修

なかむらそうクリニック 院長

中村聡

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