神経因性膀胱

しんけいいんせいぼうこう

最終編集日:2022/4/20

概要

膀胱には、尿を一定量ためておく蓄尿機能と、スムーズに残尿なく排尿させる排出機能があります。膀胱に尿がたまると、尿意を伝える信号が大脳に送られます。すると適切なタイミングで大脳から脳幹部、脊髄を通り、腰にある仙髄(せんずい)から末梢神経を経由して信号が伝えられ、膀胱の出口部が弛緩し、膀胱壁の筋が収縮して排尿が起こります。この排尿サイクルがスムーズな蓄尿・排尿をコントロールしています。

この神経系が何らかの損傷を受けて、蓄尿・排尿の働きが正常に行われなくなる状態を神経因性膀胱といいます。


原因

神経因性膀胱では、脳・脊髄の中枢神経や脊髄から膀胱に至るまでの末梢神経がさまざまな原因で障害されることで、膀胱や尿道の働きに支障をきたします。

損傷した神経系の部位によって、中枢性排尿障害、脊髄性排尿障害、末梢神経性排尿障害に分類することができます。

●中枢性排尿障害

脳梗塞や脳腫瘍、認知症、頭部外傷などによる脳血管障害などの中枢神経疾患やパーキンソン病、多発性硬化症などの神経変性疾患が原因になります。

●脊髄性排尿障害

事故などによる外傷性脊髄損傷、脊髄腫瘍、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどが原因になります。

●末梢神経性排尿障害

糖尿病による神経障害、直腸がん、子宮がんなど骨盤内腫瘍の手術による末梢神経の損傷が原因になります。


症状

損傷した神経系の部位によって症状が異なります。

●中枢型

仙髄の排尿反射中枢よりも中枢側に損傷がある痙性神経因性膀胱では、膀胱が勝手に収縮して過敏な状態となり膀胱と括約筋の協調した動作ができなくなるため、頻尿や尿意切迫感、切迫性尿失禁などを起こす排尿筋過活動の状態となります。

脳血管障害、パーキンソン病、多発性硬化症、脊髄損傷などが原因と考えられます。

●末梢型

仙髄の排尿反射中枢よりも末梢に損傷がある弛緩性神経因性膀胱は、膀胱が伸びきった状態になり縮むことができなくなります。そのため、尿意を感じにくく、尿が出なくなり、尿が膀胱の容量いっぱいになってあふれ出てくる尿失禁を起こします。

糖尿病や骨盤外傷、直腸がん、子宮がんなど骨盤内腫瘍の手術などに伴う末梢神経の障害が原因です。不必要に尿がたまってしまう状態がつづくと、尿路感染や尿路結石、膀胱尿管逆流などを招きます。


また中枢型、末梢型ともに症状が長引き尿路が荒廃してしまうと、腎機能障害に陥ることがあります。


検査・診断

診断のためには、排尿障害の性質や程度を調べる問診や排尿機能検査に加え、神経の障害部位やその原因を調べるための神経学的検査や画像検査など、多岐にわたる検査が必要になります。

具体的には詳細な問診、残尿測定、尿流量検査、膀胱内圧測定、尿検査、血液検査、超音波検査、CT検査、MRI検査、などなどが行われます。


治療

神経因性膀胱の原因となっているものを特定し、そのうえで各症状に対する治療を行います。

●畜尿障害に対して

骨盤底筋体操や膀胱訓練指導が行われます。また膀胱の緊張を解くため、抗コリン剤やβ3受容体刺激剤などの飲み薬を用いた薬物療法が行われます。

●排尿(尿排出)障害に対して

排尿訓練を行いながら、排尿筋の収縮力を強くする目的で副交感刺激薬が処方されます。尿の出口を管理する尿道括約筋の緊張が強いときはα1遮断薬が処方されます。

薬による治療が困難な場合には、患者本人が尿道に細い管(カテーテル)を挿入して、定期的に尿を体外に出す間欠自己導尿が指導されます。膀胱拡大術、経尿道的手術などの外科手術が検討されることもあります。


セルフケア

療養中

神経因性膀胱の特効薬はありません。日常的に排尿の管理を行って適切な排尿量と蓄尿量の維持を心がけることが、尿路感染の防止や腎機能の維持につながります。

監修

なかむらそうクリニック 院長

中村聡

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