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過活動膀胱
かかつどうぼうこう

最終編集日:2026/4/7

概要

過活動膀胱では、文字どおり膀胱の活動が過剰になって、膀胱に尿をためる機能に異常が現れる「蓄尿障害」が起こります。中年世代から患者数が増え始め、「過活動膀胱診療ガイドライン第3版」(2022年)によると、40歳以上の12.4%(約8人に1人の割合)に過活動膀胱があるとされています。男女比でみると男性のほうが少し多いと考えられています。

原因

過活動膀胱には原因となる病気があるものとないものがあります。


●何らかの病気が原因で起こるもの

脳卒中やパーキンソン病、脊髄神経損傷などによって、排尿にかかわる神経が障害されて起こるものを「神経因性過活動膀胱」といいます。男性では、前立腺肥大症が原因で尿路が閉塞した状態が続くと、膀胱の機能が低下して過活動膀胱を引き起こします。女性では、同じように尿路を閉塞するものとして、骨盤臓器脱(膀胱、直腸、子宮など骨盤内の臓器が下に下がって腟から出てくる状態)が過活動膀胱の原因になることもあります。なお、若い世代にも起こりやすい「心因性頻尿(神経性頻尿とも)」では、緊張やストレスなど、精神的な要因があって頻尿の症状が現れます。


●原因となる病気が特定できないもの

多くは原因が見つからない「特発性過活動膀胱」で、中年以降に患者数が増えることから、加齢が関係すると考えられています。加齢により膀胱の容量が小さくなることや、膀胱と尿道の連携機能の低下などが生じることで、過活動膀胱を起こしやすくなります。

症状

蓄尿障害として、おもに次のような症状が現れます。

・急に強い尿意が起こり、がまんするのに必死になる(尿意切迫感)

・1日8回以上トイレに行く(頻尿)、就寝中に1回以上トイレに起きる(夜間頻尿)

・トイレに行ったばかりなのに急に行きたくなる

尿意切迫感のために、トイレまで間にあわずに尿が漏れてしまう「切迫性尿失禁」が起こることもあります。


これらの症状のために外出するのが怖くなる、人と会うのが億劫になる、映画鑑賞やドライブなど、長時間トイレに行けない状況が不安になるなどで、QOL(生活の質)が著しく低下する場合も珍しくありません。

検査・診断

診断には問診が重要になります。「過活動膀胱症状質問票(OABSS)」という問診票があり、過活動膀胱(OAB)の診断および治療効果判定に使われます。4つの質問からなり、最近1週間の①昼間の排尿回数、②夜間の排尿回数、③尿意切迫感(がまんできない尿意)、④切迫性尿失禁(がまんできず漏れる)が問われます。受診の際には、先にOABSSの問診票をチェックしておくか、簡単なメモ程度でよいので1日のトイレの回数、トイレに行った時間、1回ごとのおおよその尿量、水分をとった時間・量、外出やスポーツなどの行動、尿漏れの有無を書き出しておきましょう。そのほか、蓄尿障害が膀胱炎などのほかの病気によって起きていないかを確認するために尿検査を行い、前立腺肥大や膀胱腫瘍などの有無を調べる目的で、腹部超音波(エコー)検査も行います。

治療

治療の中心は「行動療法」です。

【行動療法】

●排尿日誌

まず「排尿日誌」をつけて、自分の排尿状態や水分摂取の状況を把握します。初診時のメモに書き出したような項目を、さらにくわしく記入します。排尿日誌をつけることで、例えば「頻尿だ」と思っていても、水分摂取量が多いために尿量が増えている(成人の1日の尿量は約1500mL)といったことが、改めてわかることもあります。このような場合には、水分摂取の見直しを行います。


●膀胱訓練

トイレに行くまでの時間を少しずつ延ばしていく訓練です。過活動膀胱では、尿意を覚えても膀胱はいっぱいになっていないことが多いため、10分、20分とがまんすることで、排尿の間隔を空けていきます。1回に200mL以上の尿をためられることが目標です。


●骨盤底筋訓練

骨盤底とは、骨盤内の臓器(膀胱、直腸、子宮など)をハンモックのように下から支えている筋肉・靭帯(じんたい)などの総称です。加齢によって骨盤底が緩み、支える力が弱くなることも過活動膀胱の誘因となります。「骨盤底筋訓練」は、肛門や、女性の場合は腟の周辺の筋肉を締めたり緩めたりする運動で、繰り返し行うことで骨盤底の機能を維持・向上させることができます。とくに、尿道括約筋という尿道を締める筋肉を鍛えることが、過活動膀胱の改善につながります。


【薬物療法】

行動療法の効果が現れるまでに症状を抑えたい場合や、行動療法では十分な効果が得られない場合に、薬物療法(薬による治療)を行います。膀胱容量を増大させるβ3受容体作動薬と、過剰な膀胱収縮を抑制する抗コリン薬を用います。抗コリン薬は副作用として口渇や便秘、かすみ目、めまいのほか、認知機能への影響がみられることがあるため、とくに高齢者の服用には注意が必要です。また、閉塞隅角緑内障や前立腺肥大症がある場合には使用できません。

男性で前立腺肥大症が原因として考えられる場合には、α1受容体遮断薬やPDE-5阻害薬などの前立腺肥大症の薬を用います。 そのほか、漢方薬が効果を示す場合もあります。

セルフケア

予防

排尿日誌で自分の排尿について課題が見つかったら、それを改善するように工夫しましょう。とくに水分摂取量には注意が必要です。成人の1日の水分摂取量は、飲料や食事から合わせて2000~2500mL程度が目安ですが、過活動膀胱の症状がある場合は、過度な水分摂取を避けることが推奨されます。コーヒーやアルコールなどの飲料や食事も含めて、1500mL程度が上限とされています。また、アルコールや塩分のとりすぎも、頻尿を招きます。そのほか、からだの冷えを防ぐ、便秘や肥満を改善して骨盤底への負担をなくすことなどもプラスになります。


過活動膀胱は放置すると、膀胱や腎臓の機能がさらに低下するリスクがあります。突然の尿意や尿漏れは、医師にも相談しにくいかもしれませんが、中年以降では多くの人が抱える共通の悩みといっても過言ではありません。1人で悩まずに、泌尿器科、排尿機能外来、女性泌尿器科(ウロギネ外来とも呼ばれます)などを受診することをおすすめします

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監修

さくら内科・腎クリニック

小林顕子