過活動膀胱

かかつどうぼうこう

最終編集日:2023/3/28

概要

過活動膀胱では文字どおり、膀胱の活動が過剰になって、膀胱に尿をためる機能に異常が現れる「蓄尿障害」が起こります。中年世代から患者数が増え始め「過活動膀胱診療ガイドライン第2版」(2015年)では、40歳以上の14.1%(7人に1人の割合)にあるとされています。男女比でみると、男性のほうが少し多いと考えられています。

原因

過活動膀胱には原因となる病気があるものと、ないものがあります。


●何らかの病気が原因で起こるもの

脳卒中やパーキンソン病、脊髄神経損傷などによって、排尿にかかわる神経が障害されて起こるものを「神経因性過活動膀胱」といいます。男性では、前立腺肥大症が原因で尿路が閉塞した状態がつづくと、膀胱の機能が低下して過活動膀胱をひき起こします。女性では、同じように尿路を閉塞するものとして、骨盤臓器脱(膀胱、直腸、子宮など骨盤内の臓器が下に下がって腟から出てくる状態)が過活動膀胱の原因になることもあります。なお、若い世代にも起こりやすい「心因性頻尿(神経性頻尿とも)」では、緊張やストレスなど、精神的な要因があって頻尿の症状が現れます。


●原因となる病気が特定できないもの

多くは原因がみつからない「特発性過活動膀胱」で、中年以降に患者数が増えることから、加齢が関係すると考えられています。加齢によって、膀胱の容量が小さくなることや、膀胱と尿道の連携機能の低下などが生じることで、過活動膀胱を起こしやすくなります。

症状

蓄尿障害として、おもに次のような症状が現れます。

・急に強い尿意が起こり、我慢するのに必死になる(尿意切迫感)

・1日8回以上トイレに行く(頻尿)、就寝中に1回以上トイレに起きる(夜間頻尿)

・トイレに行ったばかりなのに急に行きたくなる

尿意切迫感のために、トイレまで間にあわずに尿が漏れてしまう「切迫性尿失禁」が起こることもあります。


これらの症状のために、外出するのが怖くなる、人と会うのがおっくうになる、映画鑑賞やドライブなど、長時間トイレに行けない状況が不安になるなどで、QOL(生活の質)が著しく低下する場合も珍しくありません。

検査・診断

診断には問診が重要になります。受診の際には、簡単なメモ程度でいいので、1日のトイレの回数、トイレに行った時間、1回ごとのおおよその尿量、水分をとった時間・量、外出やスポーツなどの行動、尿漏れの有無を書き出して臨みましょう。問診時に「過活動膀胱症状質問票(OABSS)」という問診票を用いることがあります。そのほか、蓄尿障害が膀胱炎などほかの病気から起きていないか尿検査を行い、前立腺肥大や膀胱腫瘍などの有無を調べるため、腹部超音波(エコー)検査も行います。

治療

治療の中心は「行動療法」です。

【行動療法】

●排尿日誌

まず「排尿日誌」をつけて、自分の排尿状態、水分摂取の状態を把握します。初診時のメモに書き出したような項目をさらにくわしく記入します。排尿日誌をつけることで、例えば「頻尿だ」と思っていても、水分摂取量が多くて尿量が増えている(成人の1日の尿量は約1500mL)といったことが改めてわかることもあります。このような場合には、水分摂取の見直しを行います。


●膀胱訓練

トイレに行くまでの時間を少しずつ延ばしていく訓練です。過活動膀胱では尿意を覚えても膀胱はいっぱいになっていないことが多いので、10分、20分と我慢することで排尿の間隔を空けていきます。1回に200mL以上、尿をためられることが目標です。


●骨盤底筋訓練

骨盤底とは、骨盤内の臓器(膀胱、直腸、子宮など)をハンモックのように下から支えている筋肉・靱帯(じんたい)などの総称です。加齢によって骨盤底が緩み、支える力が弱くなることも過活動膀胱の誘因になります。「骨盤底筋訓練」は、肛門や、女性なら腟の周辺の筋肉を締めたり緩めたりする運動で、くり返し行うことで骨盤底の機能を維持・向上させることができます。とくに尿道括約筋という尿道を締める筋肉を鍛えることが、過活動膀胱の改善につながります。


【薬物療法】

行動療法の効果が現れるまでに症状を抑えたい場合や、行動療法では十分な効果が得られない場合に、薬物療法を行います。膀胱容量を増大させるβ3受容体作動薬と、過剰な膀胱収縮を抑制する抗コリン薬を用います。抗コリン薬は副作用として口渇や便秘などがあるため、とくに高齢者の服用には注意が必要です。

男性で前立腺肥大症が原因として考えられる場合には、α1受容体遮断薬やPDE-5阻害薬などの前立腺肥大症の薬を用います。 そのほか、漢方薬も効果がある場合があります。

セルフケア

予防

排尿日誌で自分の排尿について課題が見つかったら、それを改善するように工夫しましょう。とくに水分摂取量には注意が必要です。成人の1日の水分摂取量は、コーヒーやアルコールなどの飲料や、食事も含めて、1500mL程度が上限とされています。また、アルコールや塩分のとりすぎも、頻尿を招きます。そのほか、からだの冷えを防ぐ、便秘や肥満を改善して骨盤底への負担をなくすなどもプラスになります。


過活動膀胱は放置すると、膀胱や腎臓の機能がさらに低下するリスクがあります。突然の尿意や尿漏れは医師にも相談しにくいかもしれませんが、中年以降では多くの人が抱える共通の悩みといっても過言ではありません。1人で悩まずに、泌尿器科、排尿機能外来、女性泌尿器科(ウロギネ外来とも)などを受診することをおすすめします。

監修

しみず巴クリニック 腎臓内科

吉田顕子

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