膵炎
すいえん

最終編集日:2022/4/4

概要

何らかの要因で膵臓に炎症が起こった状態を総称して膵炎といいます。アルコールの過剰摂取などが原因で過剰に分泌された消化酵素などを含む膵液が、膵臓自体を消化してしまう急性膵炎と、急性膵炎をくり返しているうちに徐々に膵臓が硬くなり膵臓の機能が低下してしまう慢性膵炎があります。慢性膵炎の場合、画像診断で膵管の拡張、膵嚢胞の形成、膵腫瘤の形成などの画像上の異常が認められます。

急性膵炎が重症化すると、周囲の臓器にも炎症が起きて多臓器不全となり、最悪の場合、命を落とすこともあります。


原因

急性膵炎、慢性膵炎ともに多量飲酒と胆石が2大原因とされています。どちらも発症するのは50歳代以降が多く、女性よりも男性に多くみられます。

●急性膵炎

もっとも多い原因が多量飲酒で、次が胆石です。この2つで急性膵炎の原因の大部分を占めています。多量飲酒などにより過剰分泌された消化酵素を含む膵液によって、膵臓が消化されてしまうことで起こります。酒の飲みすぎや脂質が多い食品の食べすぎがきっかけで起こる腹痛は急性膵炎が疑われます。ほかにも、原因不明の特発性、薬剤性、外傷性、自己免疫性などに加え、脂質異常症が原因となる場合もあります。

●慢性膵炎

酒の飲みすぎが原因で起きたものが全体の半数以上を占めます。ほかには、胆石、遺伝、膵臓の奇形、原因不明の特発性などによるものがあります。男性はアルコールが原因であることが多く、女性は原因不明の突発性のものが多くみられます。


症状

おもな症状は、急性、慢性ともに腹痛です。膵臓は胃の裏側、背中の近くにあるため、背中にも痛みを感じます。吐き気や嘔吐、下痢などの症状が出る場合もあります。

●急性膵炎

激しい腹痛が急に起こります。痛みは背中を丸めるとやわらぎます。症状が悪化するとショック状態となり、呼吸困難や心不全を起こすこともあります。

●慢性膵炎

初期段階のおもな症状は、腹痛や背中の痛みです。症状が進むと徐々に膵臓の機能が低下するため、消化不良、食欲不振、下痢などの症状に加え、黄疸が現れることがあります。進行すると、体重の減少、膵臓に結石ができる、糖尿病を発症する、などの症状が現れます。慢性膵炎は進行性の病気ですから、早期に治療を始めることが悪化を防ぎます。


検査・診断

一般に、血液検査のデータと画像検査の結果をあわせて診断を下します。

血液検査では、膵臓の酵素が上昇しているかどうかを確認します。腹部超音波検査、Ⅹ線検査、CT検査などの画像検査では、炎症の重症度などを確認します。

●急性膵炎の場合

急性膵炎は緊急を要するので、原因や重症度を的確に把握することが重要です。CT検査やMRI検査で膵臓を細部までチェックします。膵臓周囲の臓器に影響が及んでいないかについても確かめます。

●慢性膵炎の場合

超音波検査やCT検査などの画像検査で、膵管の拡張、膵管内結石、膵嚢胞、膵腫瘤など画像上の異常が認められれば、慢性膵炎の診断が確定します。MRI検査などによって膵臓が線維化していないかなどをくわしく観察します。糖尿病や膵外分泌機能を調べる検査を行うこともあります。


治療

膵炎の治療は、安静、絶食、十分な点滴が基本です。膵臓を休ませ、症状が落ち着いたら炎症を起こしている原因を突き止め、その原因を取り除く治療を行います。

●急性膵炎

入院治療となるケースがほとんどです。軽度や中程度の場合は、安静、絶食、十分な点滴で経過を観察します。鎮痛剤や抗生剤(抗菌薬)などの薬を使用する場合もあります。重症の場合は集中治療が必要で、手術が必要になることもあります。

●慢性膵炎

禁酒や食生活などの見直しなど、生活習慣を改善することが治療の中心です。腹痛などの症状がある場合には、内服薬で痛みをコントロールします。糖尿病を発症している場合には、インスリン注射などで糖尿病の治療も行います。膵臓に結石がある場合には、内視鏡で取り除いたり体外衝撃波で砕いたりします。これらの治療をしても状態が改善しなければ、手術が必要になる場合もあります。


セルフケア

予防

膵炎は、酒の飲みすぎが原因で発症することが多いため、禁酒を心がけましょう。まずは飲みすぎないことから始めると気持ちが楽になります。肉を中心とした脂肪分の多い食事は膵臓に負担をかけるので、消化がよくバランスがとれた食事を心がけましょう。

慢性膵炎は完治がむずかしい病気ですが、生活習慣を見直せば進行を遅らせることができます。胆石が原因の膵炎の場合、胆石の除去手術が必要かどうかは、専門医に相談することをおすすめします。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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