胆嚢炎たんのうえん
最終編集日:2023/10/17
概要
胆嚢に急性の炎症を発症する病気です。胆嚢は肝臓でつくられた胆汁を一時的に貯蔵し、濃縮する臓器で、胆嚢管という細い管で総胆管につながっています。この胆嚢管が何らかの原因で閉塞することで、胆嚢内の胆汁がうっ滞し、それがもとで感染が起こって炎症に至ります。胆石症の既往のある中年以降に好発します。
原因
多くは胆石が胆嚢と胆嚢管のつなぎ目や、胆嚢管に嵌頓(はまり込む)すること(胆石発作)が原因です。胆石発作で胆汁がうっ滞し、胆嚢の内圧が上昇して胆嚢内の胆汁の濃度が上がることなどから、胆嚢の内膜に炎症が起こります。さらに十二指腸のほうから流れの悪くなった胆汁にのって、逆行性で細菌感染が起こります。胆石発作が24時間以上つづくことで、感染が起こるとされています。炎症が進行すると、胆嚢の内膜が壊死を起こします。そのほか、胆嚢の炎症の原因として、胆管の捻転、寄生虫、自己免疫疾患などが挙げられます。
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症状
右季肋部(右の肋骨の下辺り)やみぞおちに、違和感や鈍痛が現れ、時間の経過とともに疼痛になっていきます。右季肋部には圧痛(押すと痛い)も起こり、吐き気・嘔吐、発熱を伴います。「マーフィー徴候」がみられるのも特徴的です。マーフィー徴候は、右季肋部を圧迫しながら深呼吸をすると、痛みのせいで呼吸が止まってしまう現象を指します。
検査・診断
問診と腹部触診、マーフィー徴候の確認、血液検査、腹部超音波(エコー)検査、腹部CT検査、造影CT検査、MRI検査などが行われます。血液検査で強い炎症反応がみられる、画像診断で胆嚢の腫脹(腫れ)や内膜の肥厚、胆石の存在などがみられることなどで確定診断がなされます。
胆嚢がんを併発している場合があるため、画像診断時に確認することが重要です。
治療
治療は炎症の進行によって異なりますが、初期治療として、絶食・絶飲とし、抗菌薬や消炎鎮痛薬の薬物療法が行われます。そのうえで、胆嚢摘出術が第一選択となります。
●軽症から中等症の場合
ごく軽症の場合は、初期治療のみで経過観察することもあります。それ以外は初期治療を行いながら、腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。中等症で、炎症が進行して胆嚢摘出術がむずかしい場合は、炎症の鎮静化を待って摘出術に臨むこともあります。炎症が治まらず、初期治療が効果を上げない場合は、胆嚢にたまった胆汁を排出させ、胆嚢や胆嚢管の内圧を下げて症状を改善する「胆嚢ドレナージ」が行われます。ドレナージの方法として、右季肋部からチューブを挿入して胆汁を排出する「経皮経肝胆嚢ドレナージ」、「超音波内視鏡ガイド下胆嚢ドレナージ」、十二指腸内視鏡を用いる「内視鏡的経乳頭的胆嚢ドレナージ」、「経皮経肝胆嚢吸引術」などがあり、胆嚢の状態などをみて選択されます。ドレナージの際には胆汁を採取して「胆汁培養」を行い、細菌を特定します。
●重症の場合
重症例では、まず全身状態を改善してから胆嚢ドレナージを行い、状態が安定してから胆嚢摘出術を行います。胆嚢穿孔(穴が開く)や播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発すると、重篤な状態に陥ることもあります。
セルフケア
療養中
胆嚢炎の経過観察をつづける場合は主治医とよく相談して、胆嚢摘出術のタイミングを逃さないことが大切です。
病後
胆嚢摘出術を行えば、予後は良好な疾患です。
炎症がごく軽症で初期治療のみで胆嚢摘出術を行わず、さらに原因となる胆石を放置したままにしておくと、10~50%で再発が起こるとされています。また、軽度な炎症がくり返されると「慢性胆嚢炎」の状態になり、胆嚢の内膜は硬く萎縮して機能が低下し、十二指腸や胃などの周囲の臓器との癒着を招く場合もあります。
予防
胆石症を指摘されたら治療を考慮することが胆嚢炎の予防につながります。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居明
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