脂漏性皮膚炎
しろうせいひふえん

最終編集日:2022/3/16

概要

頭皮や顔(鼻や頬)、耳の後ろなど、皮脂の分泌が活発な部位を中心にみられる慢性の皮膚炎・湿疹です。発症するとフケのような鱗屑(りんせつ)を伴った紅斑ができますが、かゆみはないこともあります。

胸、背中、摩擦の多いわきの下や鼠径部などに現れることもあります。3カ月未満の乳児や思春期、40〜60歳代に多く、しばしば再発がみられます。

乳児の頭部、額に生じやすい脂漏性皮膚炎は自然に治ることが多いですが、成人では再発をくり返すことが多くみられます。


原因

脂漏性皮膚炎の発症にはマラセチアというカビ(真菌)の一種が大きく関与していると考えられています。マラセチアは皮膚に常在している菌で、皮脂を栄養源にして急激に増えると、皮膚に炎症をひき起こすことがあります。

入浴不足・洗顔不足などによる皮脂貯蓄や寝不足、食生活の乱れ、ストレス、ホルモンバランスの乱れなど、遺伝的要因・環境的要因・精神的ストレスといったさまざまな要因が影響するとされています。


症状

症状は徐々に現れることが多く、皮脂分泌の盛んな箇所を中心にみられます。頭皮や髪の生え際、わきの下が多く、ほかにも顔(鼻のまわり、眉間周囲、耳のまわり)、首、背中、胸部、鼠径部なども発症しやすい部位です。頭皮には乾燥した、または脂っぽいフケのような鱗屑が生じ、かゆみを感じることもあります。重症例では脱毛がみられます。

乳児の脂漏性皮膚炎は自然軽快しますが、成人の場合は、慢性的に経過することが多くなります。

脂漏性皮膚炎はかぶれ(接触皮膚炎)、アトピー性皮膚炎、乾癬などとの見分けがむずかしいため、自己診断せずに皮膚科を受診することをおすすめします。


検査・診断

問診と皮膚の症状の視診を中心に診断します。脂漏性皮膚炎が疑われる場合は、白癬やカンジダなどの真菌(カビ)感染による皮膚症状などとの鑑別のため、鱗屑の一部を採取して顕微鏡を用い検査をすることがあります。

また、接触皮膚炎との鑑別が必要な場合、パッチテストを行うことがあります。


治療

日常生活では、皮膚を清潔に保つ洗浄方法を心がけ、疲れやストレスをためないよう生活習慣に気をつけることが重要です。

薬による治療では、炎症を抑えるために部位に応じたステロイド軟膏が使用されます。ステロイドは炎症の度合いで強さや使用頻度が調整されます。また、マラセチアが関与していると考えられることから、真菌の増殖を抑える抗真菌薬が含まれた塗り薬などが処方されることもあります。頭皮には、塗りやすいローションタイプのものが用いられます。抗真菌薬の成分が含有されているシャンプーを使用することも効果的です。

かゆみがひどいときには、飲み薬として抗ヒスタミン薬や、皮脂の分泌を抑えるためのビタミン剤を使うこともあります。

成人の脂漏性皮膚炎は慢性化することも多いので、生活スタイルの改善と治療薬の適正使用の両面から、皮膚の状態を良好に保つことが必要です。


セルフケア

予防

洗顔・入浴などで皮膚を清潔に保ち、低刺激性の石けん・シャンプーを使ってやさしく丁寧に洗浄・洗髪します。強くこすらず、よく泡立ててから洗うようにしましょう。マラセチアの増殖を抑える、抗真菌薬が含まれたシャンプーも市販されています。洗顔・入浴後の保湿も有用です。治療中の患部には塗り薬を使用します。

暴飲、暴食を避け、バランスのとれた食事を心がけます。とくにビタミンB2やB6が欠乏すると皮膚症状が現れやすくなります。ビタミンB群を多く含む食品(豚肉、レバー、牛乳、卵、ほうれん草、トマト、キャベツ、しじみ、さんま、椎茸)を積極的にとりましょう。皮脂の分泌を高める食品(脂肪分、糖分)やアルコール、香辛料などは控えめにし、便秘にならないように食物繊維の多いものをとるようにします。

ストレスや疲労、睡眠不足は増悪因子となるので、入浴でリラックスするなど、十分な休息をとるように心がけましょう。


監修

関東中央病院 皮膚科 部長

鑑慎司

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