乾癬かんせん
最終編集日:2023/3/24
概要
乾癬とは、全身の皮膚に銀白色の鱗屑(りんせつ:フケのようなもの)を伴い盛り上がった紅斑(こうはん:周囲との境目がはっきりした皮膚の赤み)が生じる慢性の皮膚疾患です。とくに頭やひざ、ひじ、腰、尻、爪など外部の刺激を受けやすい部位によく起こり、そのうちの約半数にかゆみの症状がみられます。感染症ではないので、人にうつることはありません。
日本における患者数は50万人前後と推定され、男女比は2:1で男性に多く発症します。
乾癬のほとんどが、鱗屑が付いた紅斑ができる「尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)」です。ほかに、関節の腫れや痛みを伴う「乾癬性関節炎」や、副鼻腔炎、上気道炎、扁桃腺炎(へんとうせんえん)などの、のどの感染症の後に大きさが1cm程度の小型の発疹が全身に多発する「滴状乾癬」。尋常性乾癬の発疹が全身に及び、全身が真っ赤になる「乾癬性紅皮症」。紅斑によって赤みを帯びた皮膚の上に、膿疱(のうほう:うみを含んだ小さなぶつぶつ)が発生し、全身に広がる「膿疱性乾癬」などがあります。
原因
乾癬の発症原因はまだはっきりとはわかっていませんが、遺伝的な要因が関係していることまでは判明しています。そこにさまざまな環境的要因(不規則な生活や偏った食事、飲酒、喫煙、ストレス、肥満、感染症、薬剤、生活習慣病など)が複雑に関与し、免疫機能に異常が生じ、乾癬の発症につながると考えられています。
症状
乾癬は状態によって5つに分類され、それぞれ次のような症状があります。
●尋常性乾癬
乾癬のほとんどが尋常性乾癬です。紅斑、皮膚が盛り上がる浸潤(しんじゅん:しみ込むように広がる)・肥厚(ひこう)、鱗屑の付着・剥落などの症状がみられます。ひざやひじ、頭皮(とくに髪の生え際)、尻、腰などの外部からの刺激を受けやすい部位に起こりやすく、爪の変形もみられます。また、約50%の患者さんにかゆみの症状がみられます。
●乾癬性関節炎
皮膚症状に加えて、関節の痛み、腫れ、こわばり、変形といった関節症状が生じます。重症化すると関節が変形して元に戻らなくなることもあります。似たような症状が現れる関節リウマチとの鑑別が必要です。
●滴状乾癬
かぜや扁桃腺炎などの感染症がきっかけで、1cm程度の小さな水滴大の紅斑が全身に現れます。子どもや若年層の患者さんに多くみられ、きっかけとなった感染症を治療することで症状は治まりますが、まれに再発をくり返したり、尋常性乾癬に移行したりする場合もあります。
●乾癬性紅皮症
尋常性乾癬の紅斑が全身に広がると、ほぼ全身の皮膚が赤くなった状態になります。その際、発熱や倦怠感、関節痛などを伴います。尋常性乾癬を放置したり、不適切な治療を行ったりしたために乾癬性紅皮症に移行するケースが多くみられます。
●膿疱性乾癬
紅斑が生じた皮膚の上に、無菌性の膿疱が多くできる乾癬です。発熱などを伴い、再発をくり返すことがあります。また、皮膚にできた膿疱が破れると、ただれが生じます。まれですが、重症化すると、急な発熱とともに全身に発赤と膿疱が現れる汎発性膿疱性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん)を起こすことがあります。
検査・診断
問診、視診、触診により皮膚の状態を調べ、診断を行います。まれに乾癬と区別がむずかしい症状がみられる場合があり、その際は、局所麻酔で皮膚を切り取り顕微鏡で調べる皮膚生検を行います。
関節に異常がみられる場合は、X線や超音波(エコー)、MRIといった画像検査を行います。また関節症状を伴う場合は、関節リウマチかどうかの検査を行います。
乾癬の患者さんはメタボリックシンドロームなどの生活習慣病を合併しやすいと考えられており、血圧や、コレステロールなどの脂質検査、糖尿病などの検査も行うことがあります。
治療
乾癬はよくなったり悪くなったりをくり返しながら経過する慢性の病気です。そのため、乾癬の治療は、対症療法(症状を軽減するための治療)が中心になります。
乾癬の治療法には、大きく分けて塗り薬による外用療法、紫外線を照射する光線療法、飲み薬による内服療法、生物学的製剤を用いた注射療法の4つがあります。まずは塗り薬を使っての外用療法を基本としながら、乾癬の症状をコントロールしていきます。病気や患者さんの状態にあわせて治療法が選択されます。
セルフケア
療養中
乾癬にかかってしまったら、治療のほかに、日常生活では次のような点に気をつけましょう。
・皮膚への刺激を避ける
皮膚をこすったり、鱗屑を無理に剥がしたりすると乾癬を悪化させるため控えましょう。
・肌を清潔に保つ
毎日の入浴で肌を清潔に保ちましょう。ただし、熱いシャワーを浴びたり、長風呂をしたり、からだや頭皮をゴシゴシと強い力で洗ったりしないように気をつけましょう。
・保湿を心がける
皮膚の乾燥も症状を悪化させる要因のひとつなので、保湿剤などを使用して乾燥から皮膚を守りましょう。
・日光浴を適度に取り入れる
紫外線には免疫反応を抑える作用があるため、適度な日光浴は、症状改善につながります。ただし、紫外線の浴びすぎに注意しましょう。
・肥満に注意する
栄養バランスのとれた食生活を心がけ、適度な運動の習慣をつけましょう。
・飲酒や喫煙を控える
アルコールのとりすぎや喫煙習慣は、乾癬に悪影響を及ぼすので控えましょう。
・ストレスをためない
ストレスは症状を悪化させる要因となります。散歩やスポーツなどで気分転換をしたり、ゆっくりリラックスする時間をつくるなど、ストレスをためない工夫を取り入れましょう。
・質のよい睡眠をとる
質のよい睡眠を十分にとることも重要です。夜寝る前はスマートフォンの使用などを控え、スムーズな眠りにつなげましょう。
監修
関東中央病院 皮膚科 部長
鑑慎司
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