記憶の衰え、物忘れ

最終編集日:2024/1/19

概要

記憶力が衰えたり物忘れがひどいと感じたりするのは、高齢者特有の感覚だと思われがちですが、若年層でも記憶力が低下することがあります。記憶の働きを阻害する原因となる可能性があるのは、次のようなものです。


●薬剤の影響

血圧降下薬や糖尿病の薬、自律神経調整薬、精神安定薬、睡眠薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などは、服用量が多すぎると記憶の働きを阻害することがあります。医師の指示どおりの量を服薬していて記憶力の低下を感じた場合には、薬の対象となる疾患への効果とのバランスをみながら量の調整を図ったり、違う薬の種類の検討が必要です。自己判断で服用を中止したり減薬したりせず、まずは医師に相談しましょう。


●飲酒の影響

過度の飲酒は記憶の働きを阻害する可能性があります。現在は断酒しているような場合でも、過去に飲みすぎの状態にあったり、アルコール依存症を患っていたりした人は、加齢とともに物忘れがひどくなることがあります。


認知症

アルツハイマー病やレビー小体型認知症などでは脳に器質的な異常が生じるため、記憶障害が顕著に現れます。認知症の多くは高齢になってから発症しますが、若年層でも発症することがあり、64歳以下で発症した認知症を若年性認知症と呼んでいます。


●高齢期のうつ病

自身や配偶者の病気、親しい人の死、引っ越しなどによって環境が変化したことをきっかけに、うつ状態になったりうつ病を発症する高齢者が増えています。うつ状態やうつ病は精神活動全般を不活発な状態にするため、症状のひとつとして記憶力の低下が現れます。


●甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが不足するために起こる甲状腺機能低下症(橋本病など)も、精神活動全般を不活発な状態にする疾患です。むくみや冷え、皮膚の乾燥など身体的な症状も同時に現れますが、甲状腺ホルモンを投与することで、どちらの症状も軽快させることができます。


●慢性硬膜下血腫

転んで頭をぶつけたり、頭部を殴打されたりして数週間から数カ月後に現れる記憶障害は、慢性硬膜下血腫による可能性があります。頭のけがが原因で頭蓋内に血腫ができ、これが脳の働きに障害を起こします。

受診の目安

救急車を呼ぶ・ただちに医療機関を受診

・意識が混濁している

・けいれん発作を起こしている

・頭痛や吐き気、手足の運動障害がある

・睡眠薬や抗うつ薬を大量に飲んだ

医療機関を受診

・直近の出来事を思い出せない

・時間や場所がわからなくなる

・徘徊や失禁がある

・抑うつの症状がある

・幻覚があったり、妄想がある

・むくみや冷え、便秘、皮膚の乾燥などの症状がある

・頭部にけがをした後に記憶力の低下が始まった

様子をみる

・年齢相応の記憶力だと周囲にいわれる

・睡眠不足でひどく疲れている

セルフケア

服用している薬剤の影響や睡眠時間の変化、ストレスなどによって記憶力が低下することがあります。心あたりがあれば、記憶の働きを阻害する原因となる可能性について見直すことも大切です。

考えられる病気

監修

昭和大学 医学部脳神経外科 名誉教授

藤本司

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