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アルツハイマー病
あるつはいまーびょう

最終編集日:2025/12/26

概要

アルツハイマー型認知症は認知症の中でもっとも多くみられる代表的な疾患です。脳組織にアミロイドβとタウという異常たんぱく質が蓄積し、神経細胞が障害されて発症します。こうした病理変化は発症の20年前から始まっています。

症状がみられない「前臨床期」、軽度の認知症状を示す「軽度認知症期」を経て、認知症、すなわち「アルツハイマー型認知症」に進行します。この経過全体をアルツハイマー病と呼び、認知症の発症以降を「アルツハイマー型認知症」と呼んでいます。

アルツハイマー病は進行性の脳疾患で、根本的な治療法はまだありません。従来は進行を遅らせる効果が認められた治療薬のみでしたが、原因物質を減らす抗アミロイドβ抗体薬が2023年から条件付きで使えるようになり、期待が寄せられています。     

また、アルツハイマー病の発症や進行には多数の因子が関係し、その重要性が明らかになりつつあります。これらの改善や是正は極めて大切な問題であり、個人や社会全体でその対策が進められています。

アルツハイマー病は進行すると、記憶や思考能力が障害され、単純な作業や日常生活も困難になります。認知症の原因疾患の約6割はアルツハイマー型認知症であり、発症後はゆっくりと進行し、亡くなるまで10年以上にわたって症状が続きます。

原因

アルツハイマー病は、脳におけるさまざまな変化が原因となって発症します。

脳の記憶に関係する部位にアミロイドβが、神経細胞にはタウという異常たんぱく質が蓄積し、海馬の萎縮から始まって、最終的には脳全体が萎縮します。アルツハイマー病の患者さんは、脳組織にアミロイド斑や神経原線維変化がみられるほか、神経細胞の脱落による脳の萎縮があり、発症する20年以上前から脳の変化が始まっていると考えられます。

アルツハイマー型認知症の約90%は遺伝と関係のない孤発性で、残り約10%は遺伝が関係する家族性アルツハイマー病です。家族性の場合、プレセニリン1、2など複数の遺伝子の異常が原因であることが明らかになっています。

そのほか、糖尿病などの生活習慣病や運動不足も誘因と考えられていますが、脳に異常たんぱく質が蓄積する直接的な原因はわかっていません。

症状

アルツハイマー病による認知症は進行性の疾患で、進行度によって症状も変化していきます。

初期の段階は軽度認知障害(MCI)と呼ばれ、少し前の出来事を思い出せない程度で日常生活に問題はありません。しかし進行とともに物忘れがひどくなり、やがて今日が何日かわからなくなったり、場所や人がわからなくなったりする見当識障害や、段取りをつけて物事を行うことができない実行機能障害、さらに理解や判断力の障害などが起きてきます。

しだいに自発性の減退や、うつ症状、物盗られ妄想などもみられるようになり、この段階になると徐々に日常生活に支障をきたすようになります。その後、失語、失行、失認と呼ばれる生活能力の低下が生じたり、妄想や徘徊が始まったりすることもあります。さらに進行すると、身内の認識もむずかしくなり、多くは最後には寝たきりという経過をたどります。

検査・診断

まず、問診で現在の症状や今までの経過を把握します。アルツハイマー病の人は病識に乏しいことが多いため、家族からも詳しい状況を聞きます。

次に、神経心理検査と呼ばれる認知機能検査(HDS-R〔改訂長谷川式簡易知能評価スケール〕、MMSE〔Mini Mental State Examination〕など)を行います。さらにMRI検査やCT検査で脳の萎縮の状態を確認するほか、PET検査(アミロイドPETではアミロイドβの蓄積を、タウPETではタウたんぱくの蓄積の程度や広がりを確認)や、必要に応じて脳血流SPECT検査などを行い、アルツハイマー病特有の脳機能低下の状態を確認します。背中から髄液を採取して行う髄液検査では、アミロイドβ42やリン酸化タウの変化をみます。さらに、ごく微量の血液検査による診断法も、ほぼ実用化される見通しになってきています。

治療

アルツハイマー病を根治する治療法はまだありません。これまでの治療は、脳内に不足している物質を補ったり、神経細胞の保護をすることで認知障害の進行を遅らせる効果が認められた治療薬である「コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)」と「NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)」が使われてきました。

一方、原因物質と考えられているアミロイドβを減らす抗アミロイドβ抗体薬が登場し、2023年12月 からレカネマブが、次いでドナネマブが使用可能になりました。これらは「原因療法」といえますが、対象は初期の軽度の場合のみに限られ、厳しい条件下で行われています。

また、うつ状態には抗うつ薬なども使用されます。幻覚や妄想がある場合には、漢方薬の抑肝散(よくかんさん)や、向精神薬を使用します。

アルツハイマー病の発病や進行には多数の因子が関係しており、その重要性が明らかになりつつあります。これらの改善・是正は極めて重要で、認知症の発症を遅らせ、進行を抑制し、症状の改善につながる予防法や治療の一環として、期待されています。

加えて、意欲の低下、関心事の縮小などが症状の進行に大きく関係しているため、好奇心を大事にし、前向きに社会とのつながりを持つ生活のほか、食生活、睡眠、運動(とくに有酸素運動)などを積極的に行うことも重要です。

個人や社会全体で取り組みが進められており、家族と医療・介護従事者による周囲のサポート体制が重要になります。

セルフケア

療養中

家族がアルツハイマー病を発症した場合、周囲の人が病気への理解を深め、病状の進行に伴う問題行動に対しても理解を示し、本人の感情を受け止めることが重要となります。

同時に、身内だけでサポートしようとしてストレスをため込まないことも大切です。介護保険などの社会的資源を活用するために、早い段階からケアマネジャーに相談するようにしましょう。

予防

アルツハイマー病は治る病気ではありませんが、軽度認知障害(MCI)の段階で発見して治療を開始することで、進行を遅らせることが可能です。とくに家族に認知症の人がいる場合や、改善可能な生活習慣病によるリスク(肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常、うつ、難聴、心房細動、腸内細菌の乱れ、歯周病など)がある人は罹患リスクが高いため、物忘れがひどくなるなどの変化を感じたら、早めに専門機関を受診するようにしましょう。

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監修

昭和医科大学医学部脳神経外科 名誉教授

藤本司