緊張性気胸きんちょうせいききょう
最終編集日:2022/1/11
概要
胸壁と肺との間にある空間を胸腔といいます。肺のなかの空気がこの胸腔に漏れて、肺が縮んでしまった状態を気胸と呼びます。
緊張性気胸とは、その漏れてしまった空気が胸腔内で増加して、肺や心血管を圧迫している状態のことです。
症状としては、胸痛、息切れ、呼吸困難などが生じます。進行すると、心臓から送り出される血液が減少し、ショック状態になるなど重篤な状態に陥るため、早急に適切な治療を行うことが大切です。
原因
肺から空気が漏れる部位が、一方向にだけはたらく弁のような構造になることが要因といわれています。息を吸い込むときには肺から胸腔内に空気が漏れますが、息を吐いたときには弁が閉じ、胸腔に空気がたまっていきます。
このような状態がつづくと、胸腔内の圧力がしだいに上昇し、肺や心血管を圧迫するので、緊張性気胸をひきおこします。
症状
初期は、胸痛、息切れのほか、心拍数が増加し、呼吸が速くなります。胸腔内に空気がたまりつづけると、気胸を起こしていない反対側の肺も強く圧迫されるようになり、めまいや呼吸困難、血圧低下が生じるほか、頸部の静脈がふくれ上がることもあります。
しだいに、心臓から全身へ排出される血液量も減少し、ショック状態に陥ります。このような進行は急速に起こるため、死に至ることも少なくありません。
検査・診断
緊急事態であるため、検査を行わず、すぐに治療を開始するケースがほとんどです。緊張性気胸かどうかを確実に診断する検査としては、胸部X線検査や胸部CT検査があります。
また、検査をしなくても、病歴や病状の問診、診察結果に基づいて診断可能です。「胸部の片側だけがふくらんで盛り上がっている」「胸部をたたくと、からっぽの容器をたたくような音がする」「聴診器を胸にあてても肺に空気が入る音が聞こえない」などの特徴が診断時にみられます。
治療
胸腔内にたまった空気を体外に出す「胸腔ドレナージ」という治療を行います。
胸腔ドレナージには複数の治療法がありますが、直ちに対処が必要な緊張性気胸では、針を胸腔に刺し、空気を外に逃す方法で、迅速に対処します。空気を除去するのと同時に、しぼんだ肺をふくらませて、自然に穴がふさがるのを待ちます。
セルフケア
病後
治癒後、日常生活にほとんど制限はありません。心身ともにストレスがかからないようにゆったりとした生活を送ることが大切です。喫煙はやめ、スキューバダイビングなど、心肺機能に負担がかかるような行動も避けましょう。飛行機も気圧の変動が激しいので、利用する場合は必ず事前に医師に相談してください。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科特任教授
巽浩一郎
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