軽度認知障害けいどにんちしょうがい
最終編集日:2026/3/31
概要
軽度認知障害(MCI)とは、記憶力の低下など加齢では説明できない軽度の障害があるものの、日常生活には支障がない程度で認知症とはいえない状態を指します。この段階で生活習慣の改善や医療介入で、認知症への進行を抑えられる可能性があり、注目されています。
軽度認知障害には次のような特徴があります。
① 本人または家族による物忘れの訴えがある
② 日常生活動作は自立している
③ 理解や判断力、遂行能力など全般的な認知機能は正常
④ 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害などが存在する
⑤ 認知症ではない
この状態を放置すると、5~15%の人が認知症に進行してしまう可能性があり、一方、適切に対処することで、個人差はあるものの、年間16~41%程度の人が認知機能が健常な状態に戻る可能性があるといわれています。
原因
アルツハイマー病(※)や脳血管障害(脳梗塞など)、さまざまな病気が原因で、日常生活にも支障をきたすほど認知機能が低下した状態が認知症です。軽度認知障害もまた、認知症でみられるような脳の変化が原因であると考えられていますが、認知症と比べてその程度が軽いことが特徴です。
※アミロイドβなどの異常たんぱくが蓄積されている病態をアルツハイマー病といい、それにより認知症になった場合をアルツハイマー型認知症といいます。
症状
認知機能の低下によって、料理の味つけが変わった、薬の飲み忘れが多い、同じ質問を繰り返すなどの症状がみられます。ただし軽度認知障害の場合は、これらの症状があっても日常生活への支障はほとんどなく、本人にも物忘れの自覚があります。一方でこれまで続けてきた趣味を楽しまなくなる、やる気がわかなくなるなど、無関心や意欲低下、うつ病のような無気力な症状が現れることもあります。
検査・診断
本人や家族が少しでも「おかしい」と感じたら、かかりつけ医や物忘れ外来を受診するとよいでしょう。必要に応じて、専門の医療機関を紹介してもらうことができます。かかりつけ医がいない場合には、お住まいの地域にある地域包括支援センターや自治体の相談窓口に相談することもできます。また、日本認知症学会や日本老年精神医学会のホームページでは、専門医や専門病院が紹介されています。
医療機関を受診すると、問診後、認知機能検査や血液検査、脳の萎縮や脳血管に病変がないかを調べる画像検査(CT、MRI)、脳の血流を調べるSPECT(スペクト)検査などが行われます。これらの検査は保険診療で受けることができます。
検査の結果と日常生活の状態を総合的に判断し、「認知症ではないが、認知機能が年齢相応とはいえない」と考えられる場合に、軽度認知障害と診断されます。
治療
軽度認知障害は、早めに診断を受け、状態に応じた適切な対応を行うことが進行を遅らせる手立てとなります。原因として考えられる病気や症状によっては、薬による治療を行うこともあります。軽度認知障害の原因療法はまだ確立されていませんが、アルツハイマー病が関係している場合には、ごく早期の症例に限り、条件付きで抗体薬の使用が検討されることもあります。
一方、認知症の危険因子を改善・取り除くことは、予防としても治療の点からも非常に重要であることが明らかになっています。
また、高血圧などの生活習慣病をはじめとする内科的な病気が原因で認知機能の低下がみられる場合は、それらの治療を適切に行う必要があります。
セルフケア
予防
認知症への移行を抑え、改善あるいは健常な状態に近づけていくためには、リスクとなる要因を改善・減らしていくことが非常に重要です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、睡眠不足、運動不足などの改善・治療が大切です。さらに、前向きで意欲的な生活を心がけ、社会とのつながりを持つことも認知機能の維持に非常に効果的といえます。
具体的には、次のような点を意識することがとても大切です。
・糖質をとりすぎないようにしつつ、たんぱく質やビタミンなど、必要な栄養素をしっかりとる
・散歩など、生活習慣にあわせた適度な運動を習慣づける
・無理なく楽しめる趣味をもつ
・地域の行事に参加するなど、人とのコミュニケーションで脳に刺激を与える
・禁煙し、過度の飲酒は控える
・聴力が低下した場合は、補聴器の使用を検討する
・睡眠を十分にとる
監修
昭和医科大学医学部脳神経外科 名誉教授
藤本司