ぎっくり腰
ぎっくりごし

最終編集日:2023/7/28

概要

ぎっくり腰は医学的には「急性腰痛」と呼ばれます。日本整形外科学会のガイドラインでは、発症からの期間が4週間未満のものを「急性腰痛」、4週間以上、3カ月未満のものを「亜急性腰痛」、3カ月以上のものを「慢性腰痛」に分けています。

ぎっくり腰はふとしたことでも起こりやすく、ほとんどの例では1~2週間で自然と改善する身近な症状といえます。しかし、その背後に特別な検査や治療が必要な疾患が隠れていないかの鑑別が重要になります。ここでは急性腰痛のうち、脊椎由来で骨折や神経症状がないものを中心に述べます。

原因

一般的に腰痛は、背中や腰回りの筋肉や靱帯、椎間板や椎体関節、骨や神経などに過剰な負担がかかり、一時的に炎症や損傷が起きることでひきおこされます。ぎっくり腰は「腰のねんざ」ともいわれるように、筋肉や靱帯がねんざに似た状態になると考えられます。これらの、脊椎の組織が原因となる腰痛のほかに、泌尿器科疾患、婦人科疾患、血管疾患などの脊椎以外の組織が原因となる腰痛もあります。

症状

突然、腰や背中に痛みが走り、動かせない状態になることもあります。重い物を持ち上げたとき、せきやくしゃみをしたとき、靴下を履こうとしたとき、朝、起き上がろうとしたとき、顔を洗うために中腰になったときなど、さまざまな動作が発症のきっかけになります。明らかな原因がなく、発症することもあります。

検査・診断

痛みについての詳細な問診や診察につづいて、必要に応じてX線・MRI・CT検査などが行われます。骨スキャンや造影検査を加えることもあります。

特別な検査や治療が必要となる急性腰痛を起こす疾患や病態は、脊椎の病気(腫瘍、感染症、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎変形すべり症、脊椎の病的骨折など)、神経系の病気(脊髄腫瘍など)、内臓や血管の病気(腎結石、尿路結石、子宮内膜症、腹部大動脈瘤など)、心因性の病気(うつ病など)など、多岐にわたります。これらの疾患や病態の可能性を示唆する症状や病態は下肢のしびれや脱力、安静時の痛みのほか、年齢(20歳未満または55歳以上)、併発症状(胸痛、発熱など)、既往歴(がん、HIV感染症、ステロイド治療歴など)、そのほか、体重減少などの項目が挙げられ、腰痛の危険信号と呼ばれています。これら危険信号がある場合には、重大な疾患が隠れている可能性があり、積極的な精密検査が必要です。

治療

ぎっくり腰が起きた場合には、上記の危険信号の有無によって対応が異なります。危険信号があればできるだけ安静を保ち、早めの医療機関への受診がすすめられます。横向きに寝て、ひざを軽く曲げ、腰を緩める姿勢で多くは痛みが軽減されます。いちばん楽な姿勢で安静をとるとよいでしょう。受診後は専門医の治療方針に従いましょう。

危険信号がなければ、できるだけ安静にせずに動く努力をします。もちろん、痛みを避ける努力は必要です。痛みが治まってからの受診でもよいでしょう。短期間のコルセットの使用は、動くのに楽であれば使用しても問題ありません。

治療は消炎鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDsなど)、筋弛緩薬や湿布の有効性は証明されています。痛みが軽減するまでの短期間使用します。

強い痛みを出さないようなよい姿勢を保つこと、できるだけ早く元の生活に戻れるように努力することが大切です。

セルフケア

予防

ぎっくり腰の多くは受診することもなく、数日から1週間で改善されていきます。しかし再発しやすく、何度もくり返すと慢性腰痛に移行してしまいます。次のようなことを心がけて、再発防止に努めましょう。


●再発防止のポイント

不自然な姿勢・無理な姿勢をとらない、肥満を改善・予防する、禁煙、過度の飲酒はしない、運動不足の解消、休養・睡眠をしっかりとる、過労や過度なストレスを防ぐ、など


とくに運動は大切です。肥満改善だけでなく、腹筋や背筋といった腰回りの筋肉を鍛えることがぎっくり腰の予防につながります。なお、椎間板ヘルニアなどの持病がある場合は、ぎっくり腰で悪化することもあるため、さらに注意が必要です。

監修

東馬込しば整形外科 院長

柴 伸昌

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