腰椎すべり症
ようついすべりしょう

最終編集日:2023/5/25

概要

背骨の腰椎と呼ばれる部分が、正常な位置からずれてしまう病気です。その結果、腰痛が発症し、神経組織を圧迫すれば足の痛みやしびれなどの症状が起こります。治療では基本的にコルセットでの固定、薬物による症状軽減、リハビリによる保存療法が選択されます。症状によっては手術療法が検討されます。

原因

何らかの理由で正常な位置からずれて、脊柱管が狭くなることで脊柱管内の神経組織を圧迫し、さまざまな症状をひきおこす状態が腰椎すべり症です。すべりの原因によって次のように大別されます。


●腰椎変性すべり症

加齢や長期間にわたる負荷などによって、椎間板や椎間関節といった腰椎を安定化している組織が徐々に変性し、腰椎が前方にすべって正常な位置からずれてしまう疾患で、とくに第4〜5腰椎の間に多く起こります。中高年の女性に多いことから、女性ホルモンの影響も考えられますが、正確な原因はわかっていません。


●腰椎分離すべり症

椎体と、その後方で椎体を支えている椎弓とが分離してしまった状態を、腰椎分離症といい、思春期のスポーツ活動などによる腰の骨の疲労骨折が原因です。この状態を放置してしまうことで、分離した部分の腰椎が安定性を失い、腰椎にすべりを生じる疾患を、腰椎分離すべり症といいます。第5腰椎と仙骨の間でのすべりが多くみられます。


●形成不全性すべり症

まれに生まれつき脊椎の発育に問題があって生じることがあり、腰椎分離症も伴い、重度のすべり症に進行する可能性もあります。

腰椎がずれて脊柱管が狭くなり(椎間板腔の狭小化)、脊柱管内の神経組織を圧迫する
腰椎がずれて脊柱管が狭くなり(椎間板腔の狭小化)、脊柱管内の神経組織を圧迫する

症状

おもな症状は腰痛と坐骨神経痛です。すべりが重度になると、脊柱管が狭くなり、神経組織などが圧迫されて下肢に痛みやしびれが現れます。長い距離を歩くと臀部や太ももに痛みやしびれを感じ、しゃがんだりして少し休むと楽になりますが、歩き始めるとまた症状が現れてきます。これを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。

すべりが軽度の場合には気づかないことが多く、X線検査で偶然発見されることもあります。

検査・診断

●X線検査

一般的にはからだの正面と側面の画像で診断され、前かがみの姿勢での画像からすべりの度合い・不安定性の程度を確認します。

●MRI検査

X線検査だけでは確認することができない神経の圧迫具合を確認でき、椎間板ヘルニアなどのほかの疾患を鑑別することができます。MRI検査によって新しい骨折が見つかることもあります。

治療

●保存療法

〈薬物療法〉

消炎鎮痛剤、神経障害性疼痛治療薬、間欠性跛行の場合には神経の血流改善のためのプロスタグランジン製剤の内服、腰への負担軽減のためのコルセット装着、神経ブロック注射など。

〈理学療法〉

腰椎のけん引、温熱療法、痛みやしびれなどの症状軽減のためにストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリ。

●手術療法

保存的療法で症状が軽減されなかった場合や、痛みやしびれ、下肢の麻痺、排尿障害など、症状が重くなった場合には手術療法が検討されます。術式は、腰椎のずれの程度や、動きによって生じる不安定性の程度を考慮して決定されます。

〈除圧術〉

椎骨がずれて脊柱管が狭まることで脊椎神経が圧迫されている状態を改善するために、神経を圧迫している部分、おもに椎弓を削って圧力を取り除く。椎弓切除術あるいは形成術とも呼ばれる。

〈固定術〉

すべっている部分が動く、つまり不安定性を伴うタイプが腰椎すべり症では圧倒的に多く、除圧だけではなく脊椎の固定が必要になることもある。骨を削って神経の通り道を広げ、すべりを起こしている背骨部分を、自分の骨や金属などで固定する。腰椎の並びを整える固定法もある。

セルフケア

予防

腰椎すべり症に対する効果的な予防法はありません。腰回りやおなかの筋肉を常に意識して使う、腰を動かしてストレッチをするなど、一般的な腰痛予防を継続的に行い、日常生活のなかで腰に負担をかけないように注意することが大切です。

監修

東馬込しば整形外科 院長

柴伸昌

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