神経痛しんけいつう
最終編集日:2022/3/31
概要
全身に張り巡らされている末梢神経には手足を動かす、痛みや感覚を伝える、体温や血圧、内臓の働きを調整するといった重要な役割があります。この末梢神経が圧迫や刺激を受け、障害されることで生じる痛みやしびれを神経痛と呼びます。
神経痛は障害される部位によって分けられ、尻から足先へ伸びる座骨神経が障害されて起こる座骨神経痛、肋骨に沿って走る肋間神経の障害による肋間神経痛、脳から顔面へ3つに分岐する三叉神経の障害による三叉神経痛などがあります。末梢神経に強い刺激が加わると、その周辺に激痛が走ります。通常、激痛は突然やってきて短時間で治まりますが、それを何度もくり返します。
原因
神経痛の原因はさまざまです。坐骨神経痛の場合は、加齢もしくは激しい運動、長時間の同じ姿勢や長年の姿勢の悪さ、腰椎椎間板ヘルニア(若い人に多い)や腰部脊柱管狭窄症(高齢者に多い)などの疾患が原因として挙げられます。坐骨神経痛は神経痛のなかでもっとも多いといわれています。
肋間神経痛は、肋骨や胸椎の骨折のほか、胸椎椎間板ヘルニアや腫瘍、肺炎などが引き金になっている場合もあります。
三叉神経痛は、疲れやストレスなどが要因として挙げられますが、はっきりとは解明されていません。三叉神経が脳に入るところで、血管に圧迫されて生じるものがあります。
このほか、検査を進めても原因がわからない「突発性神経痛」などもあります。
症状
神経痛の種類により、症状は異なり、神経の支配領域の痛みが生じます。坐骨神経痛は尻や太もも、ふくらはぎの裏などにビリっとした痛みが走ります。しびれや麻痺、締め付けを感じるケースもあり、悪化すると椅子から立ち上がることや、歩くことさえ困難になります。
肋間神経痛は背中や胸、あばらの辺りに、鋭い痛みを感じます。くしゃみやせき、深呼吸時などに症状がみられ、前かがみの姿勢を長くとることが関係するものもあります。
三叉神経痛は、食事や歯磨き、洗顔といった日常的に行う動作でも目の周りや頰、額などにズキズキと刺すような激痛が走ります。その多くは顔の片側に集中して起こり、けいれんやひきつりを伴うこともあります。
検査・診断
神経内科や整形外科、脳神経外科を受診し、問診、診察、画像検査、血液検査などを通して、痛みの対象部位について調べます。
坐骨神経痛や肋間神経痛が疑われる場合は、神経が圧迫されている部位を明らかにするために複数の部位のX線検査、CT検査、MRI検査など、症状に適した検査を行います。
肋間神経痛は、心筋梗塞や狭心症といった心臓の病気と症状が重なるので、見分けるために心電図や超音波検査を用いることもあります。
三叉神経痛についてはおもに頭部MRI検査で確認します。
治療
神経痛の種類により、さまざまな治療法があります。
坐骨神経痛や肋間神経痛には痛みに対しての薬を使った治療が行われます。おもに鎮痛剤の処方のほか、神経痛を起こしている箇所に麻酔薬を注入する神経ブロック注射などを行います。また、場合によっては根治をめざすために手術が検討されることがあります。
三叉神経痛の場合、神経の伝達を抑える効果がみられるカルバマゼピンという薬の服用のほか、血管による神経の圧迫を解除する手術(微小血管減圧術)や、ガンマナイフといわれる放射線治療などで対処します
セルフケア
療養中
坐骨神経痛や肋間神経痛の対処法としては、ストレッチがもっとも効果的です。背骨や筋肉をゆっくり伸ばすことで、緊張を和らげます。定期的な運動をして筋肉をつけ、腰への負担を減らすことも大切です。また、痛みを抑える方法として、鍼治療やツボ押しが、血流をよくしたり、筋肉をほぐしたりする効果を期待できます。
予防
坐骨神経痛、肋間神経痛は、日ごろから姿勢を正すことを意識し、長時間のデスクワークなど同じ姿勢がつづくときは合間にストレッチなどをするのがおすすめです。
三叉神経痛の場合、原因が解明されていませんが、疲れやストレスが原因と考えられているので、自分に合った解消法を見つけ、できるだけストレスの少ない生活を継続するとよいでしょう。
監修
昭和大学医学部 脳神経外科 名誉教授
藤本司
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