手根管症候群

しゅこんかんしょうこうぐん

最終編集日:2023/7/26

概要

手根管症候群は「正中神経麻痺」と呼ばれることもあります。正中神経は頸(首)部の脊髄から分岐している腕神経叢(そう)から出ている神経で、上腕からひじ、さらに前腕の内側から手根管を通って手のひらまで伸びています。手根管は手のひら側の手首の辺りにある、骨と靱帯に囲まれた空間(トンネル)で、正中神経と、滑膜に覆われた指を曲げる9本の腱が通っています。何らかの原因で、この部分で正中神経が圧迫されて症状が起こるのが「手根管症候群」です。神経が圧迫されて生じる神経障害のなかでもっとも多く、一生涯で発症する確率は約10%にのぼるといわれます。女性に好発し、手をよく使う人、妊娠中、糖尿病、透析中の人に好発します。

原因

原因が明らかでない「特発性手根管症候群」が多くみられます。発症のきっかけとして、手の酷使、妊娠・出産、更年期などが挙げられます。ほかの病気が原因となる場合は、原因疾患として、関節リウマチによる滑膜炎、外傷による手根管の変形、甲状腺機能障害などの代謝異常、透析、腫瘍や腫瘤などが挙げられます。

耳下腺に炎症が起きて腫れや痛みが生じる
正中神経が手首付近にある手根管というトンネルで圧迫された状態

症状

正中神経領域に、手指のしびれ、痛み、感覚鈍麻(感覚が鈍くなる)が起こります。初期には人さし指と中指にしびれ、痛みが現れます。徐々に親指から薬指の中指側までにしびれ、痛みが広がります。とくに夜間と早朝に症状が強くなります。手を振ると改善することが多いようです。病状が進むと、親指の付け根(母指球)が萎縮して筋力低下を起こし、物をつまむ動作や細かい作業ができなくなります。また、手指でOKサインをつくることがむずかしくなります。

検査・診断

しびれ・痛みについての問診を行い、ティネル(Tinel)徴候やファーレン(Phalen)徴候を調べます。ティネル徴候では、手首の手のひら側で、手根管の部分を軽くたたくと、しびれが手指に広がります。ファーレン徴候は、両方の手首を曲げて手の甲同士をあわせて押すと、指先にしびれが出てくる状態を指します。また、手指でOKサインができるかどうかも確認します。

これらのテストでおおよその診断はつけられますが、確定診断として神経伝導検査を用いる場合もあります。神経部分の皮膚に電気刺激を与えて、伝導の様子を調べるもので、障害の部位や程度、範囲を診断することができます。

腫瘤などが疑われる場合は、超音波(エコー)検査やMRI検査を行います。

治療

治療には保存療法と手術があります。


●保存療法

症状が強いときにはできるだけ手を使わないようにする、夜間などに手首を固定するスプリント(コルセット)を用いるなどで、患部の安静を保ちます。消炎鎮痛薬(内服、湿布)で痛みを抑え、また末梢(まっしょう)神経の保護・再生を促すビタミンB12製剤が効果を現すこともあります。痛みが治まらない場合は、神経障害性疼痛治療薬やステロイド薬の局所注射、あるいは局所麻酔薬の局所注射を用いることもあります。


●手術

2~3カ月保存療法を行っても十分な効果がみられない、母指球の萎縮が高度である場合には、手術を考慮します。手術では手根管の一部である横手根管靱帯を切り離して手根管内の減圧を図り、症状を改善します。現在は小さい切開創で行う「直視下手根管開放術」や、内視鏡を用いた手根管開放術が主流になっています。とくに透析が原因の場合は、進行性であるため、神経障害などが重度になる前の手術が推奨されています。

セルフケア

病後

症状が軽度であれば、固定しつづけるのではなく、生活のなかで自然に動かすことが大切です。手首のストレッチなどを行うと、手根管周辺の筋肉の柔軟性が得られるため、症状の軽減効果が見込めることがあります。ただし、必ず主治医に相談してから実践しましょう。生活のなかでは、悪化を防ぐために、次のようなことに気をつけましょう。


●フライパンなど、重い物を持ち上げるときは、片手ではなく両手で行う

●思いきりタオルなどを絞らない。絞るときは縦絞りにし、薄手の絞りやすいものに替えるなどする

●パソコンのキーボードは、タオルやパームレストを用いて手首を曲げないように真っすぐにして打つ

監修

昭和大学医学部 脳神経外科 名誉教授

藤本司

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