末梢性顔面神経麻痺

まっしょうせいがんめんしんけいまひ

最終編集日:2022/4/6

概要

末梢性顔面神経麻痺は、表情をつくったり、唾液を分泌したりする顔面神経に障害が生じる病気です。ウイルス感染やけがなどが原因で、単純ヘルペスウイルスへの感染によるものは、ベル麻痺といわれ、顔面神経麻痺の7割近くがこのタイプといわれています。

帯状疱疹ウイルスが原因の場合もあり、これはハント症候群といわれています。ほかにも、骨折や外傷によって顔面神経が圧迫され、情報伝達が途中で阻害されてしまうことで起こることもあります。

性別に関係なく、子どもから高齢者まで、どの年齢層でも起こります。急に発症するため、突然の違和感から鏡を見て、驚いて医療機関を受診する場合が多くなります。


原因

単純ヘルペスウイルスへの感染によるベル麻痺がもっとも多く、顔面神経麻痺全体の70%近くに及びます。また、帯状疱疹ウイルスによるハント症候群も15%程度あり、この2つが末梢性顔面神経麻痺の原因のほとんどを占めています。

また、外科手術やけがの後に麻痺が生じることもあり、脳神経外科や耳鼻咽喉科などの手術、顔面神経が通っている側頭骨の骨折や深い傷による顔面神経の損傷、まれに脳腫瘍などが原因となります。ほかにも、神経や血管の疾患によって顔面神経に障害が生じたことで、しだいに末梢性顔面神経麻痺となるケースもあります。


症状

突然発症することが多く、顔の筋肉がうまく動かせなくなります。よくみられるのは、口やまぶたを閉じづらい、飲食時にこぼす、顔が歪む、笑いづらい、まぶたや顔のけいれんなどです。顔面神経には、味の情報を脳に伝えたり、涙の分泌をコントロールする働きもあるため、味覚異常が起きたり、涙の量が減ってドライアイになるなどの症状がみられるケースもあります。さらに、ハント症候群では水疱、耳鳴り、難聴、めまいが生じたり、耳の後ろから後頸部にかけて鈍痛が起こることもあります。


検査・診断

問診と視診で、自覚症状や顔面神経麻痺の範囲や程度を調べます。涙腺や味覚、唾液、聴力の検査のほか、麻痺の重症度を判断するため、顔面神経に電気刺激を与える検査を行う場合もあります。

治療

薬物治療が基本です。ベル麻痺やハント症候群の場合、顔面神経のむくみをとるステロイド治療と、抗ウイルス薬による治療を行います。治療により、多くが約2〜4週間で元の状態に戻ることが多いものの、なかには表情筋の動きの回復が不十分なこともあります。この場合は、マッサージや電気刺激、表情筋のリハビリテーションなどを行ったり、形成外科において顔の動きや顔の左右のバランスを整える手術を行ったりすることもあります。

外科手術や側頭骨骨折などのけがや、顔面に深い傷を負って顔面神経が損傷されたことによる顔面神経麻痺では、早期に形成外科で舌下神経や咬筋神経を顔面神経につなげる手術を行います。


セルフケア

療養中

ベル麻痺の70%程度、ハント症候群の30%は自然治癒しますが、顔のこわばり、顔面けいれん、罹患した側の萎縮などの後遺症を残すこともあります。そのため、末梢性顔面神経麻痺の治療は早いほどよく、とくに重症の場合は発症してから3日以内に治療を開始することが大切といわれます。

放置して時間が経ってしまうと、治療で麻痺が改善しても、動かなくなっていた部位の筋力が低下しているため、以前のように表情筋を動かせないことがあります。機能を回復させるためにリハビリテーション、温熱療法やマッサージ、発音の訓練などを組み合わせた治療が必要となり、回復に時間を要することになります。


監修

昭和大学医学部 脳神経外科 名誉教授

藤本司

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