坐骨神経痛ざこつしんけいつう
最終編集日:2023/7/31
概要
坐骨神経は、骨盤から下肢に伸びる長い神経で、派生する神経も含めると、足の指先まで伸びています。そのため、坐骨神経痛では、臀部(でんぶ)、下肢の後ろ側と外側、足指までと、症状は広範囲に現れます。
原因
腰椎や骨盤などの病気が原因で起こります。腰椎の疾患としては、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、腰椎変形すべり症、馬尾や腰椎の腫瘍などが、骨盤内の疾患としては骨盤内腫瘍(直腸がん、膀胱がんなど)、子宮筋腫などが挙げられます。
そのほか、帯状疱疹による神経痛、梨状筋症候群などが原因になることもあります。梨状筋症候群は、坐骨神経の骨盤から下肢への出口部分にある梨状筋の部分で坐骨神経が圧迫され、痛みやしびれを起こす状態を指します。
症状
坐骨神経に沿った、臀部の外側、太ももの後ろ側・外側、ふくらはぎの前面・外側、足首から先の前面・外側に、痛みやしびれ、張り感、灼熱感などが現れます。坐骨神経の支配領域に部分的に起こることもあれば、支配領域全体が痛むこともあります。
腰痛を伴うことも多く、腰を動かしたときや腰を反らせたとき、からだをかがめたときに症状が強くなることが多いようです。
安静にしていても、痛んだり、長時間立つ・座ることができないなどの症状も現れます。原因疾患によっては、歩行困難、排尿困難などの重篤な症状がみられることもあります。
検査・診断
痛みやしびれについて、くわしく問診し、診察をします。診察において知覚障害の有無、筋力低下の有無など、神経脱落の所見がないかを調べます。また「ラセーグ徴候テスト」などで坐骨神経の刺激状況を確認します。
ラセーグ徴候テストは、測定者が、仰向けになった患者さんの片足のひざを伸ばしたまま上げていきます。異常がない場合は70°以上、上げられますが、坐骨神経痛があると下肢の後ろ側に痛みが生じ、健側にくらべて十分に上がりません。並行してX線・CT・MRI検査などを行い、症状の原因となる疾患を特定します。
整形外科領域の診察や検査で異常を認められない場合は、膀胱がんや子宮筋腫などの骨盤内疾患も疑い、専門領域の診察と検査が必要となります。
治療
原因疾患の治療が基本になります。
痛みをとるための対症療法として、消炎鎮痛薬が無効な場合は、神経障害性疼痛治療薬や抗うつ薬などを用います。抗うつ薬はうつ病に用いられる薬ですが、脳内の疼痛を抑制する機能を賦活化する働きがあり、鎮痛効果ももっています。
薬物療法で改善されない場合は、神経ブロックが行われます。痛みを起こしている神経やその周辺に局所麻酔薬を注射する方法で、痛みの軽減に効果がみられます。そのほか、保存的療法として、牽引療法、コルセットの使用、運動療法などのリハビリテーションが行われることもあります。いずれの治療も、原因疾患の治療に基づいた判断が優先されます。
セルフケア
療養中
坐骨神経痛の症状の軽減については、一般的に次のようなことがすすめられます。
●症状が強い間は……
安静を保つ、重い物を持たない、激しい運動は避ける、長時間同じ姿勢をとりつづけない、肥満を改善する
腰周辺の筋肉の緊張をとり、筋力をつける腰痛体操で症状の軽減効果がみられる場合があります。しかし、原因疾患によっては間違った体操などが病状を悪化させる場合もあります。自己判断は避け、主治医と相談のうえで実践してください。
監修
東馬込しば整形外科 院長
柴 伸昌
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