ギラン・バレー症候群
ぎらん・ばれーしょうこうぐん

最終編集日:2023/7/27

概要

胃腸炎や上気道炎などの感染症の1~3週間後に、末梢(まっしょう)神経が障害され(ニューロパチー)、四肢の筋力低下などの症状が急速に現れます。ギラン・バレー症候群の患者さんの約3分の2に先行感染がみられるとされています。発症率は人口10万人あたり、年間0.4~4人とまれな病気です。好発する年代はありませんが、成人男性に多い傾向があります。

呼吸筋の麻痺、肺血栓などの合併症が起こることが多く、合併症による致死率は決して低いものではありません。また、後遺症が残るケースも多く、患者さんの約15%に発症1年後の歩行困難が残るとされています。

原因

発症の引き金となる原因病原体として、カンピロバクター(食中毒を起こす)、肺炎マイコプラズマ、EB(エプスタイン・バール)ウイルス(発熱、のどの痛み、疲労感などを起こす)などがあります。これらの病原体に感染した際につくられた抗体が末梢神経の糖脂質と結合し「抗糖脂質抗体」となり、末梢神経を攻撃するために起こると考えられています。

症状

せきや腹痛、下痢などの感染症による症状の数日後に下肢に力が入らなくなり、徐々に上肢に広がります。顔の筋肉が動かしにくい(顔面神経麻痺)、物が二重に見える複視(外眼筋麻痺)、ろれつが回らない、食事をうまく飲み込めないなどの症状を伴う場合もあります。起立性低血圧や重度の血圧変動、不整脈などの全身症状が現れることもあり、重症例では麻痺が呼吸筋に及び、呼吸困難が起こります。

症状の程度は個人差が大きく、軽症から重症までさまざまです。多くは発症後1カ月前後で症状のピークを迎え、その後は改善して半年から1年以内に寛解します。しかし重症例では症状が長引いたり、寛解後に再発することもあり、再発率は2~5%とされています。

検査・診断

問診や視診、腱反射検査、血液検査(抗糖脂質抗体の検出)、筋電図検査、神経伝導検査(末梢神経の状態をみる)、髄液検査(ギラン・バレー症候群ではたんぱく質が増加し、細胞数は正常)などが行われます。消化管の感染症が先行している場合は、便の検査も行います。

治療

亢進している免疫機能を抑えるために、経静脈的免疫グロブリン療法(IVIg)、または血液浄化療法が行われます。IVIgは点滴によって投与され、ステロイド薬との併用で効果が上がるとされています。血液浄化療法にはいくつかの方法がありますが、ギラン・バレー症候群では「単純血漿(けっしょう)交換療法」がすすめられています。単純血漿交換療法は、血液成分である血漿をアルブミン溶液に置き換えて体内に戻す方法です。

急速に進行する四肢の筋力低下、歩行困難、血圧や脈拍の異常変動、嚥下(えんげ)障害、呼吸困難がみられる場合は、集中治療室で全身管理・治療が行われることもあります。並行して四肢のリハビリテーションや、嚥下障害がある場合には嚥下のリハビリテーションなども進められます。

セルフケア

予防

ギラン・バレー症候群になりやすい人というのはまだわかっていません。何よりもインフルエンザ、細菌性胃腸炎などの感染症にかからないことが予防の第一といえるでしょう。そして、何らかの感染症の後に手足の脱力やしびれなどを自覚したら、早めに受診することが大切です。

監修

昭和大学医学部 脳神経外科 名誉教授

藤本司

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