化膿性関節炎/敗血症性関節炎
かのうせいかんせつえん はいけつしょうせいかんせつえん

最終編集日:2025/3/6

概要

関節内に細菌が侵入して炎症を起こす病気です。手術や外傷、動物などに咬まれるなどで細菌が直接侵入する場合と、からだのほかの部位の感染減から細菌が血液を介して侵入する場合があります。血液を介した場合を「敗血症性関節炎」と呼ぶことがあります。

からだのどの関節にも起こり得ますが、膝関節の発症が多いと考えられています。通常は単関節(一つの関節)のみの発症です。

体力や免疫力の低下した高齢者や小児に好発します。

なお、関節内にウイルスが侵入して感染を起こすものは「ウイルス性関節炎」として、区別されています。

化膿性関節炎を発症したら、できるだけ早期に治療を開始することが重要です。治療が遅れて関節の破壊が起こると、もとに戻すことはできず、荷重時や運動時の痛みと機能障害が後遺症になる可能性があります。


原因

侵入する細菌は黄色ブドウ球菌が最も多く、そのほか、連鎖球菌、肺炎球菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの頻度が高くなっています。かつては原因菌として淋菌が多かったのですが、最近では減少しています。

感染経路としては、●手術や関節内注射、けが、動物などに咬まれるなどで直接侵入する、●皮膚や筋肉、骨など、関節の周囲の組織に感染を起こした細菌が侵入する、●尿路感染症、肺炎、扁桃炎などの原因菌が血液を介して侵入する、などが考えられます。


症状

感染を起こした関節に痛み、圧痛(押すと痛む)、腫れ、熱感が現れます。動かすと痛むために可動域が制限され、関節にうみがたまります。

症状は時間単位、日単位で急激に現れます。

関節の症状のほかに、発熱倦怠感悪寒などの全身症状がみられる場合もあります。

上記のような関節を中心とした急性の症状が現れたら、整形外科を受診します。


検査・診断

症状から化膿性関節炎が疑われたら、血液検査とX線検査を行い、炎症の有無や関節周囲の状態、進行度を精査します。X線検査で診断がつけにくい場合は、MRIを行うこともあります。また、関節に針を刺して(穿刺)関節液(関節内の体液)を採取し、原因菌を明らかにします。

治療

化膿性関節炎は時間が経過すると関節の軟骨が破壊され、関節の変形、荷重時や運動時の機能障害、痛みなどの後遺症をまねくおそれがあります。また、原因菌が血液を介して全身に広がり、敗血症を起こすリスクもあります。なにより早急に適切な治療を開始することが肝要です。

治療は抗菌薬の投与(初期には点滴で、その後内服)、手術による関節内の洗浄、リハビリテーションが基本になります。手術では関節内の洗浄と、菌が付着し炎症を起こした滑膜の切除が行われます。感染が落ち着いたあとも軟骨の破壊が進んで関節が不安定になっている場合には、関節固定術などが必要になることもあります。リハビリテーションは可動域訓練、筋力を上げる訓練などが行われます。

治療には1~2カ月程度必要とされています。



セルフケア

予防

化膿性関節炎には、糖尿病関節リウマチの既往、人工関節、関節手術や関節注射の既往、アルコールの多飲など、さまざまなリスクファクターが考えられています。持病のコントロールや節酒につとめ、注射や手術、人工関節などの治療を受けた関節には、できる限り負担をかけない生活を送りましょう。



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監修

東馬込しば整形外科 院長

柴 伸昌