WEB版

進行性核上性麻痺
しんこうせいかくじょうせいまひ

最終編集日:2025/2/20

概要

脳の大脳基底核、脳幹、小脳などに異常リン酸化タウたんぱくという物質が沈着し、脳細胞が変性を起こす病気です。

パーキンソン症候(パーキンソニズム:後述)と認知機能障害が現れ、ゆっくりと進行します。

わが国での患者数は約1万2000人(2019年)、40~60歳代の発症が多くみられます。

厚生労働省の指定難病になっています。


原因

脳の神経細胞およびグリア細胞に過剰にリン酸化した異常たんぱくの蓄積が病因として重要ですが、なぜこのような変化が起こるか、原因はまだわかっていません。

症状

歩行障害が現れ、発症初期から転びやすいことが特徴です。転びそうになって防ごうとしても手が出にくいため、顔面から倒れ込むこともあります。

病状が進むと、姿勢を保つことができない(姿勢保持障害)、パーキンソン症候(動作が緩慢になる、無動、歩き出すことがむずかしくなる、すくみ足、筋肉が硬くなる筋強剛など)、眼球運動の異常、嚥下障害などが現れます。眼球運動の異常は発症後2~3年で出現することが多く、最初は上下方向を見ることに障害が現れる「垂直注視麻痺」から始まり、次第に左右方向も障害される「水平注視麻痺」が加わります。嚥下障害が早期からみられる場合、予後が不良とされています。

筋強剛は手足に現れやすいパーキンソン病と異なり、首や体幹に多くみられます。姿勢保持障害も早期から現れ、後方へ転倒しやすいことが特徴で、進行すると首が後ろに反るなどの症状が現れます(パーキンソン病では前傾やひじ・ひざの屈曲が多い)。

軽度な認知機能障害の合併が多く、思考緩慢、衝動性、固執性などが特徴的で、ろれつがまわらないなどの言語障害を伴うこともあります。病気を深刻にとらえることが少なく、多幸的(幸福感・満足感で満たされている状態)に見えることもあります。

進行性核上性麻痺を疑う頻回の転倒などが現れたら、脳神経内科を受診します。


検査・診断

症状から進行性核上性麻痺が疑われたら、脳MRI、脳血流シンチグラフィ、脳ドーパミントランスポーターシンチグラフィ(DATスキャン)、MIBG心筋シンチグラフィなどで、パーキンソン病との鑑別も含めて診断が行われます。

そのほか、大脳皮質基底核変性症や血管障害性パーキンソニズムなどとの鑑別も必要です。


治療

進行性核上性麻痺の治療法はまだ確立されていないため、症状を改善する治療(対症療法)が中心になります。

パーキンソン症候に対して抗パーキンソン病薬(L-ドーパ)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などが用いられます。認知機能障害については、有効とされる薬は現時点ではありません。

並行して、低下している機能を維持するためのリハビリテーションが行われます。バランス訓練、言語訓練、嚥下訓練、硬くなった筋肉のストレッチなどが挙げられます。


セルフケア

療養中

進行性核上性麻痺は、名称にあるように進行していく病気です。日常生活動作(ADL)も低下して、発症から2~3年で車いすが必要になり、4~5年で臥床状態(寝たきり)になるといわれます。少しでも機能を維持するために、リハビリテーションに努めましょう。

また、誤嚥性肺炎を防ぐために口腔ケアをきちんと行うことも大切です。

周囲の人は、転倒によるけがや誤嚥褥瘡(じょくそう:床ずれ)などに注意して介護を行いましょう。


Xで送る
LINEで送る
Facebookで送る
URLをコピー

監修

昭和大学 医学部脳神経外科 名誉教授

藤本 司