飲み込みにくさ・誤嚥

最終編集日:2022/3/30

飲食物が飲み込みにくい、むせる、つかえる、といった状態を「嚥下障害(えんげしょうがい)」といい、飲み込んだものが食道でなく気道へ入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいます。嚥下障害や誤嚥は咽頭周辺の筋肉が弱っている高齢者に多くみられますが、適切なセルフケアを行うことで改善が可能です。

原因

飲食物が飲み込みにくくなる「嚥下障害」は、何らかの病気やからだの異常が原因で起こることもありますが、高齢者の場合は咽頭周辺の筋肉が弱ることによっても起こります。通常、咽頭の筋肉は飲み込んだものを食道へ流すと同時に、気道を閉めて飲食物が肺に入るのを防ぐ働きをしています。しかし、この力が低下すると飲食物をスムーズにのどへ送り出しにくくなったり気道が閉まりにくくなったりします。その結果、飲食物を飲み込みにくい、飲食物が気管に入ってむせるなどの症状が現れます。

症状・影響

食べるという動作には飲み込むための筋力だけでなく、ものをかみ砕くための筋力も必要です。嚥下障害の状態になると、固形物をかみ砕けない、飲食物が飲み込みにくい、食事中にむせる、食事に時間がかかる、食事をすると疲れる、などの症状が現れます。湿性嗄声(しっせいがいそう)といって、咽頭内に食べ物が残ってしまうことが原因でガラガラした声やかすれ声になるなど、声質が変化することもあります。

治療

嚥下障害の程度が軽度であれば、食事の際にひと口を小さくする、食べ物にとろみをつけて飲み込みやすくする、などの嚥下指導が行われます。口腔内の菌を減らすための口腔ケア指導や咽頭周辺の筋肉を鍛えるための運動指導が行われることもあります。
嚥下障害を起こした結果、飲食物が気道から肺へ流れ込んでしまうことを「誤嚥」といいます。人の口腔内には多くの細菌が存在しているため、誤嚥を起こすと飲食物と一緒に菌も肺に入り込んでしまい、肺に炎症が起きることがあります。これが「誤嚥性肺炎」です。誤嚥性肺炎は再発をくり返すケースが多く、高齢者の死因の上位でもあるため、嚥下障害が重症である場合には外科的治療として、嚥下機能改善手術、誤嚥防止手術などが検討されることもあります。

セルフケア

飲食物が飲み込みにくいと感じる場合には、食事の内容や食事をするときの姿勢などを改善して誤嚥を防ぎましょう。食材は小さく刻み、やわらかく調理したりとろみをつけたりすると飲み込みやすくなります。
食べるときの姿勢も大切です。背中を丸めた前かがみの姿勢で食べたり、椅子にもたれて胸を張った姿勢で食べたりすると誤嚥しやすくなるため、背筋を伸ばした姿勢で、少しずつゆっくり食べるようにしましょう。食べた物の逆流を防ぐため、食後2時間程度は横にならないようにして過ごします。“あいうべ体操”(口呼吸改善のための口の体操)のように、口や舌の筋肉トレーニングや肺活量を増やすなどのリハビリ的な口腔体操も、嚥下障害の予防になります。
また誤嚥による細菌の侵入を防ぐため、歯磨きの際には舌磨きも行うようにし、義歯の手入れも怠らないようにして口腔内の清潔を保つようにしてください。

監修

あしかりクリニック院長

芦刈伊世子

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