糖尿病性網膜症とうにょうびょうせいもうまくしょう
最終編集日:2022/1/11
概要
糖尿病の合併症として起こる目の病気です。目のなかには、光を感じ取って、脳の視神経に伝達する網膜という組織があります。この網膜が障害を受けることによって、視力が低下したり、視界がかすんだりします。最悪の場合、失明に至るケースもあり、成人してからの失明の大きな原因となっています。
原因
糖尿病になると、血液中の糖分が細胞にうまく取り込まれなくなります。そして、高血糖の状態がつづくと、やがて糖が血管に障害を与えます。とくに網膜内にある血管は細いので、障害を受けやすく、血管の詰まりや出血などをひきおこします。
障害を受けて機能しなくなった血管に代わり、新しい血管(新生血管)がつくられますが、非常にもろいため、出血などをくり返します。この状態が視力低下の原因となります。
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症状
初期には自覚症状はほとんどありません。ただし目のなかの血管を検査すると、小さな出血などが起こっている場合があります。中期には、急激に視力が低下したり、見えにくくなったりします。ある程度、病気が進行すると、飛蚊症という症状が現れます。飛蚊症とは、視界に黒い小さな点がいくつも見えるような状態のことです。
網膜が剥がれて、大きな出血を起こす網膜剥離や緑内障など、ほかの病気を併発することもあります。悪化した状態で放置していると失明を招きかねません。
若年層ほど進行が速い病気なので、糖尿病に罹患している若い人は注意が必要です。
検査・診断
屈折検査(視力検査)、眼圧検査、網膜の観察をする眼底検査などから、網膜症かどうかを診断します。
網膜症が疑われる場合は、フルオレセイン蛍光眼底造影という検査を行い、網膜血管内の血液の流れや、通常の眼底検査では発見しにくい病変などをくわしく調べます。
治療
完治することがむずかしい病気のため、症状を軽減させる治療が行われます。
初期の段階では、血糖をしっかりコントロールすることで症状が緩和できるので、医師に相談し、処方された薬剤を服用することになります。アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬などに網膜症の発症を抑える効果があるといわれています。
ある程度進行している場合(中期)は、新生血管の増殖を防ぐために、レーザーで眼底を焼く「レーザー光凝固術」を行います。これは網膜症の進行を抑え、失明を防ぐために効果的な治療です。
これらの治療をつづけても改善しない場合、網膜剥離が起こった場合(末期)は、硝子体手術を受けて、硝子体(眼球の内部の大半を占めるゼリー状の組織。入ってくる光を屈折させる役割をする)内の出血を除去したりします。
セルフケア
予防
早期発見が重要となる病気なので、糖尿病にかかっている人は、自覚症状がなくても眼科を受診して、定期的に検査しましょう。初期の段階を過ぎると、網膜が元に戻らないことがほとんどです。
監修
井上眼科病院院長
井上賢治
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