裂孔原性網膜剥離れっこうげんせいもうまくはくり
最終編集日:2023/3/27
概要
網膜にある光を感じとる感覚網膜と、その土台となっている網膜色素上皮の間に網膜下液が入り込んで、はがれてしまう状態をいいます。網膜剥離のなかでも、網膜に生じた穴(裂孔)から、目のなかの液体(液化硝子体)が網膜の下へ流れ込んで、網膜剥離を起こしてしまうものを裂孔原性網膜剥離と呼びます。
年間、数千~1万人に1人程度発症し、年齢的には20歳前後と50~60代以降と2つの年代でピークを迎えます。若い年代では、網膜が変性して薄くなった部分に萎縮性の穴が生じることで起こり、アトピー性皮膚炎、外傷などに伴って起こるケースもあります。
高齢になって起こる場合は、加齢に伴って網膜が引っ張られて穴が開くことで起こります。
網膜剥離が起きると、光への感覚網膜の感度が低下し、視野や視力に影響が現れます。放置すると徐々に網膜の働きが低下して、やがて失明に至ることもあるため、治療では手術によって網膜を元に戻すことが必要となります。
原因
裂孔原性網膜剥離の場合、発症年代によって原因が異なります。
若年層で多くみられるのは、強い近視の人の眼球が通常より長いため、薄く変性した部位が網膜にでき(格子状変性)、そこが萎縮して穴が開き、網膜剥離が起こるケースです。このほか、スポーツや事故で眼球を打撲したり、目の周りに重症のアトピー性皮膚炎があって、慢性的に目を強くこすったりすることで網膜裂孔が生じ、網膜剥離の原因となることもあります。
高齢層で起こるケースでは、網膜に接着していた硝子体という組織が、加齢とともに委縮し、徐々に網膜から離れていきます(後部硝子体剥離)。その際、網膜と硝子体の間に癒着の強い部分があると網膜が引っ張られて網膜裂孔が生じ、そこから網膜がはがれていきます。
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症状
網膜裂孔の発症に伴い、目の前に小さな虫が飛んでいるように見える飛蚊症や、光があたっていないのにフラッシュのような光が走る光視症、といった自覚症状が現れます。
網膜剥離が進むと、剥離部分に視野欠損が生じます。さらに剥離が網膜の中心にある黄斑部まで広がると、視力が急に低下し、物がゆがんで見える変視症を生じることもあります。
検査・診断
裂孔原性網膜剥離では、まず問診で、自覚症状に発症時期や、外傷やアトピー、さらに網膜裂孔以外で網膜剥離の原因となる病気など既往症について確認します。つづいて網膜の状態を確かめるために眼底検査を行います。検査は瞳を開く目薬(散瞳剤)を使用して瞳孔を開いて、裂孔の部位と数を確認します。また、広角眼底写真撮影やOCT(光干渉断層撮影)検査で眼底を精査します。
眼内に出血や白内障があるなど、眼底が十分に見えないときは、超音波(エコー)検査を行うことがあります。
治療
裂孔原性網膜剥離の治療は外科手術が基本となります。おもな手術方法は次の2つです。
●強膜バックル術(強膜内陥術)
外側から網膜裂孔にシリコンスポンジなどをあててへこませ、さらに穴の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って剥離した網膜をはがれにくくし、網膜を復位・固定します。必要があれば網膜の下にたまった水を抜く方法です。必要に応じて、スポンジなどのあて物を眼球に輪状に縫いつけることもあります。
●硝子体手術
眼球に数カ所の穴を開け、細い手術器具を挿入して、硝子体を除去、裂孔の周囲に網膜光凝固術を行い、硝子体の代わりに眼内にガスを入れ、網膜を復位させます。ガスは自然に吸収されて房水に置き換わっていきます。また、凝固した裂孔が安定するまで約1週間かかるため、その間はうつ伏せの姿勢で過ごす必要があります。
セルフケア
予防
網膜剥離は、症状が進むにつれ、剥離の範囲が広がっていきます。そのため、剥離した網膜には栄養が十分に届かず、徐々に機能も失われていきます。網膜の機能が失われてからの治療では、視力や視野にあまり回復がみられないため、早期治療が重要となります。
網膜剥離を発見する方法として、片方の目を隠して次のようなチェックを行い、気になる症状があれば眼科を受診しましょう。
・視力が落ちてきた
・物がゆがんで見える、大きさが変化して見える
・見えにくい部分がある
・飛蚊症がひどくなった
監修
井上眼科病院 院長
井上賢治
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