網膜白斑
もうまくはくはん

最終編集日:2023/9/25

概要

眼底検査で、網膜に白い病変が現れる状態を指します。くっきりとした白い斑点(硬性白斑)と、境界が不明瞭な綿花のような白い塊(軟性白斑、綿花状白斑)に分けられます。硬性白斑は、血液中のたんぱく質や脂肪が血管から漏れ出て、網膜に沈着したものです。軟性白斑は、網膜の神経線維層に起きた病変で、神経線維のむくみ、血液凝固にかかわるフィブリンという物質や白血球の集積があるときに生じ、網膜の虚血状態を現します。いずれも糖尿病網膜症高血圧性網膜症、網膜静脈閉塞症などで起こります。軟性白斑はそのほか、白血病や全身性エリテマトーデスなどでも現れます。

とくに罹患者が多く、失明のリスクが高いため注意が必要なのは、糖尿病の合併症として起こる糖尿病網膜症によるもので、網膜白斑は網膜症の進行具合を現す所見として治療選択などの重要な指標となります。

ここでは、おもに糖尿病網膜症による網膜白斑について説明します。

原因

糖尿病網膜症によってひきおこされる所見です。一般的に糖尿病罹患後、5年以上経つと網膜の病変が始まるといわれています。糖尿病によって、目の血管を流れる血液の粘度が高くなり、血流が悪くなったり血管を詰まらせたりすることで、網膜の酸素不足・栄養不足、毛細血管の脆弱化・破たんによる眼底出血、網膜のむくみなどが起きて、網膜や視神経に障害が起こります。

症状

網膜白斑が現れても、自覚症状はありません。

検査・診断

網膜白斑は眼底検査で発見されます。糖尿病を発症していたら、定期的に眼底検査、蛍光眼底造影検査、光干渉断層検査(OCT)などの検査を受けて、糖尿病網膜症の進行を把握し、治療開始のタイミングを逃さないようにします。

一般的に糖尿病網膜症は、①網膜症の発症なし、②単純網膜症、③増殖前網膜症、④増殖網膜症の4期に分けられ、通常、硬性白斑は単純網膜症の段階で、軟性白斑は増殖前網膜症の段階でみられます。

治療

硬性白斑のみられる単純網膜症の段階では、治療は開始されないことがほとんどです。糖尿病の治療(血糖コントロール)によって、白斑やそのほかの点状出血などは消退することが多いからです。しかし、血糖コントロールをおろそかにすると、網膜の障害が進んでしまいます。網膜の状態をみるために、3カ月から半年に1度の定期検査が必要です。

軟性白斑が現れる増殖前網膜症の段階になると、網膜全体の虚血状態が進んでいます。この段階から症状は不可逆的(元の状態に回復しない)になります。これ以上の悪化を抑えるために「網膜レーザー光凝固術」が行われます。レーザー光を網膜の虚血部分に照射して細胞を凝固させ、次の段階である増殖網膜症への進行を食い止める方法で、タイミングよく治療を行えば、約80%に進行抑制効果がみられるとされています。

セルフケア

療養中

眼科検診などで網膜白斑を指摘されたら、くわしい検査を受けましょう。原因となる糖尿病や高血圧症などでは、初期には自覚症状がほとんどないために、罹患していても気づかない場合もあります。目の検査とともに、原因疾患を特定するために、内科の受診もおすすめします。

また、糖尿病を持病とする場合は、医師の指示に従って血糖コントロールに努め、定期的な眼科検診も欠かさずに受け、重篤な状態に陥らないようにすることが肝要です。

監修

井上眼科病院 院長

井上賢治

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