加齢黄斑変性
かれいおうはんへんせい

最終編集日:2022/4/14

概要

加齢黄斑変性は、加齢や喫煙、紫外線などが原因で起こる目の病気です。黄斑(おうはん)は網膜の中央部にあり、物を見るために重要な部分です。ここに異常が生じると、物がゆがんで見える、視野の中心が暗くなる、欠ける、視力が低下するなどの症状が出ます。

糖尿病網膜症や緑内障と同様に、放置すれば失明に至る病気のため、注意が必要です。完治はむずかしいですが、適切な治療を行えば視力は守られるため、早期発見、早期治療が重要です。


原因

加齢黄斑変性は、紫外線や加齢による網膜へのダメージが原因といわれています。

目のなかにある脈絡膜から異常な血管(脈絡膜新生血管)が発生し、その血管が破れて出血し、もれ出た血液中の成分が組織内にたまり、網膜を押し上げます。それにより黄斑が腫れて、見え方に異常が現れます。

加齢黄斑変性症は、脈絡膜新生血管がある滲出型(しんしゅつがた)と脈絡膜新生血管がない萎縮型に分類されます。

●滲出型加齢黄斑変性症

脈絡膜新生血管があり、日本人の加齢黄斑変性のほとんどはこのタイプです。進行が速く、急激に視力が低下し、治療が遅れると一生、視力0.1以下の見えにくい状態となってしまいます。

●萎縮型加齢黄斑変性症

脈絡膜新生血管がないタイプです。進行が穏やかで徐々に中心部の視力が低下するのが特徴です。


症状

視野の中心部がゆがんで見える、中心部が暗く見える、人やものの見わけがしにくくなる、文字が読みにくい、段差が見えにくいためによくつまずく、などの症状があります。老眼の見えにくさとは異なります。急激に症状が進行するタイプや徐々に見えづらくなるタイプがあります。

進行すると視力の低下や色覚異常が起こり、治療を行わずに放置すると視力が0.1以下となり、社会生活が困難となります。


検査・診断

必要に応じて以下の検査が行われます。

●視力検査

視力低下の有無を調べます。眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても視力が1.0に満たない場合は、加齢黄斑変性を含む目の病気が疑われます。

●アムスラー検査

視界のゆがみや視界の暗点を発見するための検査です。

●眼底検査

目の奥の網膜や血管の状態を観察し、異常がないかを調べます。

●蛍光眼底造影検査

うでの静脈に注射した造影剤が、眼底の血管に流れ込んでいく様子を連続して撮影し、眼底の血管を調べます。異常な新生血管や、血流がもれている場所などを確認できます。

●光干渉断層計(OCT)

眼底検査では見えない網膜の断面や厚み、くぼみも映し出します。黄斑部周辺の変化も精密にとらえることができるため、診断時の参考となります。


治療

萎縮型の場合の治療法はとくにありませんが、新生血管が生じて滲出型に移行する場合もあり、定期的な眼科検査、診察が必須です。

滲出型の場合は、積極的な治療が必要となります。異常な新生血管の増殖にかかわるVEGFというたんぱく質の活性を抑える薬を硝子体に直接注射します(抗VEGF療法)。

そのほかにも症状に応じて、光線力学的療法、レーザー光凝固術、飲み薬による治療などが選ばれます。


セルフケア

予防

何よりも早期発見、早期治療が重要です。残念ながら、障害を受けた部分の網膜を再生することはできませんが、黄斑部の障害は症状が出やすく、早期に発見できれば視力の低下を抑えることができます。物がゆがんで見える、中心が見づらい、視野の中心が暗いといった症状がないか、日頃から、左右のそれぞれの目の見え方をチェックしましょう。

加齢性黄斑変性の最大のリスク要因は喫煙です。喫煙習慣のある人は禁煙することをおすすめします。また、紫外線による網膜へのダメージは、加齢性黄斑変性につながりますので、日頃からサングラスなどで目を保護するとよいでしょう。また、網膜の細胞にダメージを与える活性酸素を減らすために、抗酸化ビタミンやミネラルを多く含む食品を摂取しましょう。ルティンを含むサプリメントも有効といわれています。



監修

井上眼科病院 院長

井上賢治

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