中心性脈絡網膜症
ちゅうしんせいみゃくらくもうまくしょう

最終編集日:2022/4/20

概要

網膜は、目に入ってきた光の情報を脳の視神経に伝える働きをしています。眼底に広がる薄い膜で、外側には血管に富んだ脈絡膜という膜があります。

中心性脈絡網膜症は、眼底のほぼ中央にある「黄斑」という部分に水分(=漿液)がたまり、いわばその部分の網膜に水ぶくれができて、網膜剥離が起きた状態になります。病態から、「中心性漿液性脈絡網膜症」と呼ばれることもあります。黄斑部は視力にかかわる部分であることから、ものの見え方に異常が現れます。多くは片目に起こりますが、両目のケースもめずらしくありません。30~50歳代の壮年期の男性に多く、男性は女性の3倍リスクが高いともいわれます。

ほとんどは一過性で自然に治癒していきますが、再発率が30~40%と高いのも特徴です。


原因

発症の原因はまだ解明されていません。ストレスや過労の影響が大きいと考えられています。そのほか、妊娠や薬物(ステロイド)の影響も指摘されています。

網膜と脈絡膜の間には網膜色素上皮という層があります。ストレスや過労などの誘因が加わると、網膜色素上皮や脈絡膜の働きが低下して、脈絡膜から漿液が網膜にもれ出してしまい、水ぶくれをつくるのではないかと考えられています。


症状

網膜黄斑部の下に水ぶくれができるために、視野の中央部に見えない部分(暗い部分)ができたり(中心暗点)、ものがゆがんで見えたり(変視症)、小さく見えたりします(小視症)。視力の低下は軽度なものがほとんどです。

検査・診断

問診ののち眼底検査で黄斑部の水ぶくれが確認できれば、蛍光眼底造影検査で漿液のもれ出ている部分を探ります。網膜のむくみや剥離の状態をみる光干渉断層計による検査を行うこともあります。

高齢者の場合は、同じように黄斑部に病変が現れる加齢黄斑変性との鑑別が重要です。


治療

3~6カ月程度で自然に治癒するケースもあるため、ストレスや過労を軽減しながら、しばらく様子をみます。

6カ月以上経っても水ぶくれが引かず、網膜剥離が改善されない、あるいは一度は治まったが再発してしまったようなケースでは、レーザー光をあてて漏出点を凝固させる「網膜光凝固術(レーザー治療)」が行われます。レーザー治療を行うことで、回復を早め、再発を予防することができます。レーザー治療では凝固によって細胞が障害されるため、これまで、漏出点が黄斑部の中心(中心窩)に近い場合には適応されませんでした。しかしマイクロパルス閾値下凝固術が登場したことで、適応可能な範囲が広がっています。

レーザー治療が適応されない場合は、たんぱく分解酵素薬や末梢循環改善薬などを用いた薬物療法を行います。


セルフケア

療養中

中心性脈絡網膜症は良性の疾患で、予後も悪くありません。しかし水ぶくれによる網膜剥離が長引くと、治療後も症状が残ったり、再発をくり返すリスクが高くなったりします。また、ストレスや過労を避ける生活をつづけるのは、働き盛りの年代にはむずかしいことが多いでしょう。タイミングをみてレーザー治療を考慮することも必要です。

そして極力、休息や良質な睡眠を積極的にとるように心がけましょう。忙しい時期には、ものの見え方に変化が起きていないか、自己チェックすることも大切です。異常が感じられたら、早めに眼科を受診してください。


監修

井上眼科病院 院長

井上賢治

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