味覚障害

みかくしょうがい

最終編集日:2023/5/16

概要

味覚に異常が現れる病態です。味覚障害には「量的味覚障害」と「質的味覚障害」があります。60歳以上に多く、男女の割合は、2対3で女性に多いとされています。

原因

味覚障害はさまざまな原因で起こります。もっとも頻度が高いのが亜鉛欠乏性味覚障害で、約20%を占めます。原因が特定できない特発性のものも約20%の頻度で起こります。そのほか、薬剤性や心因性、全身疾患(肝障害、腎障害、消化器疾患、貧血など)、内分泌の異常(糖尿病や甲状腺疾患など)、口腔疾患(舌炎や唾液分泌の減少など)、風味障害(嗅覚障害、鼻炎など)、中枢性(頭部外傷や脳血管障害など)、妊娠、医原性(中耳や扁桃の手術、歯科治療、放射線治療など)などが原因として挙げられます。近年では新型コロナウイルス感染症の一症状・後遺症として現れる味覚障害が注目されていますが、そのメカニズムはまだ明らかになっていません。

亜鉛欠乏が味覚障害を起こすのは、亜鉛が、味蕾(みらい)という器官の中にある味覚を感じる味細胞の代謝に重要な働きをしているからです。

亜鉛欠乏は、①摂取不足(無理なダイエット、偏食・少食など)、②吸収不全状態(吸収を妨げる食物の過剰摂取、消化器の病気、薬剤性、加齢など)、③需要の増大(妊娠、授乳、激しいスポーツなど)、④排泄の増加(腎疾患、肝疾患、糖尿病、人工透析、薬剤性、激しいスポーツなど)によってひきおこされます。

症状

味覚障害では、次のような症状が現れます。量的味覚障害と質的味覚障害は重複することもあって、症状だけから原因を特定するのは困難とされています。


●量的味覚障害

味が薄い(味覚低下)、まったく味がしない(味覚脱失)、特定の味だけしない(解離性味覚障害)


●質的味覚障害

口の中に何もないにもかかわらず、塩味や苦味などを感じる(自発的異常味覚)、何を食べても違う味がする(異味症)、何を食べてもまずい(悪味症)

検査・診断

味覚についてのくわしい問診を行います。いつからどんな症状があるか、きっかけとなる事柄としてかぜやインフルエンザの罹患、中耳や扁桃炎、歯科の治療歴、原因となり得る疾患の既往歴、服用中の薬剤、ストレスの有無などを確認します。口腔内の観察を行い、血液検査で腎機能・肝機能や亜鉛、銅、ALP(血清アルカリホスファターゼ:亜鉛不足で低値となる)などの値を調べます。日本臨床栄養学会では血清亜鉛値が60μg/dL未満を亜鉛欠乏症、60~80μg/dLを潜在性亜鉛欠乏と定義しています。

味覚機能検査として、現在、電気味覚検査と、ろ紙ディスク法(テーストディスク)が保険適用となっています。電気味覚検査は微量の電流で舌に刺激を与え、味覚を感じる神経の状態を調べます。ろ紙ディスク法は甘味、塩味、酸味、苦味を別々に染み込ませた小さなろ紙を舌の上に置き、味を感知できるかを調べます。

症状の強さを測定するためにビジュアル・アナログ・スケール(VAS)を用いることもあります。VASは100㎜の線を引き、左端をまったく異常のない状態、右端をもっとも強く症状が現れた状態として、現在の症状がライン上のどの位置にあるかを表して症状の程度を見える形にする方法です。

考えられる原因疾患によって、唾液量測定や心理検査、X線やCTなどの画像検査を行い、原因を特定します。

治療

原因疾患があればその治療を、薬剤性であれば原因となる薬剤の中止を行います。並行して味覚障害の基本的な治療である亜鉛の補充を行います。

まず食事での改善を試みます。亜鉛の1日の摂取量は、成人男性10㎎、女性8㎎、妊婦10㎎、授乳中11㎎が推奨されています。亜鉛を多く含む食品には、牡蠣(かき)、たらこ、ホタテ、うなぎ、豚レバー、牛肉、卵黄、ナッツ類、納豆、豆腐、乳製品、しいたけ、海藻、白米、食パンなどがあります。また、動物性たんぱく質やビタミンC、リンゴ酸などを含む酸性の食べ物は、亜鉛の吸収を促進してくれます。逆に、コーヒーやカルシウム、未精製の穀類などは亜鉛の吸収を妨げます。

食事療法で効果がみられない場合には、亜鉛製剤を服用する亜鉛補充療法が行われます。

現在、味覚障害に対して保険適用となっている亜鉛製剤はありません。しかし、2種類が保険外使用として認められています(ポラプレジンク、酢酸亜鉛水和物)。一般的に数カ月から半年程度、飲みつづける必要があります。一度、血清亜鉛値が低くなると、食事療法では改善されないケースがほとんどで、亜鉛補充療法を行うことになります。

早期に治療を行うことで、70%以上に自覚症状の改善がみられたという報告もあります。

セルフケア

予防

味蕾にある味細胞の機能を高めるために、日常生活では以下のことがすすめられます。

●亜鉛が多く含まれる食材を積極的にとる

●口腔内を清潔に保つ

●だしや香辛料の工夫で香りがわかる料理にする

●味があまり感じられなくても盛り付けを考え、目で楽しむ料理にする

●孤食を避け、話しながら楽しく食事できるようにする、など


また、ガムやキャンディーを用いる、レモン水でうがいをする、酸味の強いメニューを取り入れる、水を頻回に口に含むなどで、唾液の分泌を促す工夫をすることもよいでしょう。

監修

新高円寺はっとり歯科医院 院長

服部重信

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