口唇口蓋裂
こうしんこうがいれつ

最終編集日:2022/4/7

概要

口唇裂は、生まれつき上唇に割れ目(裂)がある状態のことです。割れ目が唇だけのものや鼻まで及ぶもの、歯肉まで割れているものなどがあります。近年は、形成手術による治療で見た目や機能面(食事や会話)において問題が生じることは少なく、ほとんどは良好な経過をたどります。

原因

口唇裂が発生する原因は、胎児の顔や口蓋が形成される妊娠初期の2~3カ月頃に、胎児に異常な力が加わったこと、母体の栄養障害、精神的なストレス、薬剤使用の影響(副腎皮質ステロイド薬、鎮痛薬など形態異常を誘発する催奇性薬剤)、風疹にかかったこと、放射線照射を受けたことなどによると考えられ、一部は遺伝によるものといわれています。また、高齢出産になるほど発生率が高くなるという説もあります。

割合としては、環境要因、染色体異常、遺伝要因がいずれも10%で、残りの70%が原因不明であり、はっきりしていないのが現状です。発生頻度は、日本人では約500人に1人の割合ともいわれています。


症状

上唇に割れ目がある状態のため、見た目でわかり、審美的な観点で支障が生じます。鼻咽腔閉鎖(軟口蓋と咽頭の間を閉じる機能)ができないため、手術や言語治療をしない場合、発音がうまくできず、とくにパ行、タ行、カ行、サ行の発音が困難となります。

口蓋裂の場合、上あごの発育が悪くなり、手術によって上あごの発育がさらに悪化する場合があります。また、上の歯の歯並びが悪くなったり歯の数が足りなくなる、また受け口になったりします。こうしたことから、患者さん本人が心理的コンプレックスをもつこともあります。口唇裂で生まれると、口蓋裂以外にも、顎裂や手足や耳の形態異常、ヘルニアや心臓の形態異常を合併することもあります。

検査・診断

口唇裂は、出産後すぐに赤ちゃんの唇と口腔内の状態を見て確認することができます。さらに、必要に応じて別の疾患がないかを調べるために、血液検査、X線検査、心電図、心エコーなどを行います。

最近では、出生前の超音波(エコー)検査によって、口唇裂と診断されることも増えてきています。超音波検査で口唇裂以外の形態異常が確認された場合には、染色体異常などの疾患が疑われることがあり、羊水検査などが検討されることもあります。

口やあご、顔の生まれつきの形の病気の治療は、哺乳指導、小児医療、口腔内や顔面の細かな手術手技、言葉の訓練、中耳炎の治療、歯科や矯正歯科の手技、顔面の骨切りの手技、遺伝相談など、さまざまな専門的アプローチを必要とするため、そのための連携体制を整えている医療機関もあります。


治療

口唇裂の形成手術の時期は、形態や機能回復のため、生後3カ月以降、体重5kg以上が目安とされています。手術法は、患部の状態(片側性唇裂か、両側性唇裂か)によって異なります。片側性唇裂の場合、ミラード変法という手術によって、口唇と鼻腔内の一部を切開後、鼻孔底を形成して縫合します。両側性唇裂の場合、裂の状態によって両側同時に手術する場合と、片側ずつ2回に分けて行われる場合があります。両側同時形成の場合、ミューリンケン法という手術法があります。

口蓋裂の手術は、発音機能と上あごの発育への影響を考慮し、1歳~1歳2カ月頃に行う場合があります。手術法にはプッシュバック法とファーロー法の2種類があり、どちらも術後の発音機能の回復は良好です。どちらの手術も、口蓋の破裂部を閉鎖するのではなく、鼻咽腔閉鎖機能に重要な働きをする口蓋帆挙筋という軟口蓋の筋肉を正常な位置に戻して左右の筋肉をつなげること、軟口蓋の長さを延長することが重要です。

初回の口唇裂の手術後、口唇や鼻の変形が残ったりした場合、小学校就学前くらいに修正手術が行われることがあります。鼻の修正は、変形した鼻軟骨を正常な位置に戻す手術で、鼻軟骨の発育が終了する10代後半頃に行われます。適切な治療を行うことで、見た目の審美面をはじめ、食事や会話などの機能面なども問題発生は少なく、ほとんどは良好な経過をたどります。


監修

新高円寺はっとり歯科医院 院長

服部重信

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