乳がんにゅうがん
最終編集日:2025/12/19
概要
乳房は母乳をつくる乳腺と、それを包む脂肪組織で構成されており、乳がんは乳腺にできるがんです。30代から増え始め、40代と60代にピークがありますが、年齢を重ねても発症する可能性があり、女性にとって、生涯にわたってリスクのあるがんです。
女性がかかるがんのなかでもっとも多く、11人に1人の女性が生涯で乳がんに罹患するといわれています。
原因
女性ホルモンのエストロゲンが深く関与しています。初経年齢が早い、閉経年齢が高い、出産経験がない、初産年齢が高いなど生涯に経験する月経回数の多い人はエストロゲンの分泌量が相対的に多くなるので、その分、乳がん発症のリスクが高まるといえます。
飲酒、閉経後の肥満、脂質の多い食生活、運動不足といった生活習慣も発症リスクを高める原因になります。また遺伝的に乳がんや卵巣がんにかかりやすい人を遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)といい、注意が必要です。
症状
おもな症状は、乳房を触ったときにしこりを感じることです。ほかにも、皮膚にえくぼのようなへこみやただれが見られる、乳頭が陥没する、血液が混じった分泌物が出るなどがあります。ただし、症状がまったく自覚できないことも少なくありません。

検査・診断
視診、触診でしこりの有無、大きさ、硬さを確認し、マンモグラフィや超音波検査で乳房内の病変の有無、しこりの性状や大きさなどを調べます。
これらの検査によって乳がんの疑いが強いと判断された場合は、状況に応じて細胞診や組織生検を行い、そこでがんの診断がついた場合は、全身への広がりを調べるためにCTなどの検査に進みます。
治療
がんの進行度、病変組織の細胞の特徴、年齢、本人の希望などを総合的に検討し、手術療法、放射線療法、化学療法を組みあわせて行います。
手術では乳房の一部、もしくはすべてを切除する治療法となります。リンパへの転移が認められた場合には、必要に応じてリンパ節の切除も行われます。乳房の一部を切除する手術を選んだ場合でも、自分の組織や人工物を使って乳房を再建することが可能です。
早期の乳がんでは手術の前後で薬物治療を行うことが多いです。手術を行うことが難しい進行した乳がんの場合は、薬物療法(薬による治療)を中心に治療を進めていきます。
セルフケア
予防
乳がんは、早く気づくことがとても大切な病気です。特別なことをしなくても、日頃のセルフケアで「いつもと違う変化」に気づくことができます。
・入浴時のセルフチェック(自己触診)
体を洗うときや保湿の際に、胸を指の腹で円を描くようにやさしく触って、乳房全体と脇の下を確認してみましょう。しこりを見つけようとするよりも「いつもの自分の胸」を知ることが大切です。
しこり、硬さ、痛み、左右差など、何か違和感がないか意識してみてください。
・鏡でチェック
入浴前や着替えのときに鏡の前で、形や大きさの変化、皮膚のへこみや赤み、乳首から分泌物がないかを、確認しましょう。
・家族歴を知っておく
母・姉妹・祖母など近い親族に乳がんになった人がいるか把握しておくと、検診や受診時の参考になります。
・気になったら早めに相談
セルフチェックは診断の代わりではありません。「いつもと違う」と感じたら、迷わず乳腺クリニックや乳腺外科へ。早めの相談が安心につながります。
・乳がん検診を受ける
日本では、40歳以上の女性は2年に1回の乳がん検診が推奨されています。年齢や体質、家族歴によって適した検査が異なることもあるため、医師に相談してみましょう。
監修
自衛隊福岡病院
緒方奈々恵