メッケル憩室
めっけるけいしつ

最終編集日:2025/3/6

概要

胎児期初期には、母体からの栄養を取り込むための、臍帯(さいたい:へそのお)と小腸をつなぐ「卵黄管」という器官が存在します。胎生早期で卵黄管は自然に消滅しますが、消滅せずに残ってしまい、小腸壁が外側に飛び出た状態になったもの(憩室)がメッケル憩室です。

多くは回盲弁(小腸と大腸のつなぎ目、盲腸の手前にある、内容物を逆流させないための弁)から40~100cm小腸側(口側)に発生します。腸の組織(粘膜、筋層、漿膜など)で構成されていますが、胃粘膜の組織や膵臓の組織が迷入(混入)しているケースもあります。

発生頻度は、人口の約2%にみられます。


原因

なぜ卵黄管が残るのかは、まだ明らかになっていません。

症状

メッケル憩室があっても、多くは無症状です。しかし何らかの原因で炎症を起こしたり(憩室炎)、出血を起こしたり(憩室出血)、憩室がひっくり返ったり(憩室翻転)、憩室に穴が開く(憩室穿孔)などの合併症が起こると症状が現れます。

●憩室炎……腹痛吐き気・嘔吐発熱などがみられ、小児に多いといわれます。

●憩室出血……下血が起こります。胃粘膜が迷入している場合は胃酸を分泌して潰瘍をつくってしまいます。この潰瘍からの出血は大量出血になり、貧血症状を呈します。

●憩室翻転……憩室翻転により腸重積を起こした場合、腹痛、血便、嘔吐、顔面蒼白などの強い症状が現れます。

●憩室穿孔……小腸の壁は薄いため、炎症により穿孔を起こすことがあります。穿孔では腹痛、吐き気・嘔吐、発汗、発熱、顔面蒼白などの激しい腹膜炎の症状が現れます。


検査・診断

問診で憩室が疑われたら、超音波検査やCTでメッケル憩室の存在を調べます。

憩室炎を起こしていなければ、造影検査や小腸内視鏡検査(カプセル内視鏡あるいはバルーン内視鏡を用いる)が行われます。

メッケル憩室では内部に胃粘膜が迷入していることが多く、胃粘膜の迷入が疑われる場合には、メッケル憩室シンチグラフィーが有用とされています。放射性医薬品を注射して、憩室内に胃粘膜が存在するかどうかを写し出します。

合併しやすい腸重積や腸閉塞を伴っていないかの精査も必要です。

虫垂炎などほかの腸の炎症疾患などとの鑑別が行われます。


治療

無症状であれば、治療は必要ありません。

憩室炎で軽症あれば、抗菌薬を投与して経過をみます。炎症が重度な場合は、入院して絶食・点滴による抗菌薬投与を行います。

憩室出血では、出血が少量であれば入院して絶食・栄養や水分の点滴、貧血が強ければ鉄剤の投与などが行われます。出血が多い場合には、内視鏡的止血が考慮されます。内視鏡的止血には、止血薬散布、止血クリップの装着、純エタノール局所注入(純エタノールで血管を収縮させて止血する)、高周波凝固(熱で組織を凝固させて止血する)などがあります。小腸壁は薄いため、施術時・施術後の穿孔に注意が必要です。

胃粘膜の迷入がある場合には、胃酸の分泌を抑制する薬を投与することもあります。

憩室炎、出血のいずれも症状が強い、胃粘膜の迷入がある、穿孔や腸重積などをきたしている場合は、手術(開腹、腹腔鏡下)を行い、メッケル憩室がある部分の腸管を切除します。


セルフケア

療養中

メッケル憩室の多くは症状がないため、ほかの病気の画像診断や手術の際に発見されることがほとんどです。健康診断目的のCTで偶然発見されることもあります。無症状であれば治療は必要ありませんが、合併症による症状が現れた場合は、小児の場合は小児科または消化器内科を、成人の場合は消化器内科を早めに受診するようにしましょう。

Xで送る
LINEで送る
Facebookで送る
URLをコピー

監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居 明