腹膜炎

ふくまくえん

最終編集日:2022/4/4

概要

腸を包んでいる腹膜が何らかの原因によって炎症を起こす病気です。原因はさまざまですが、多くの場合、腹腔内臓器の炎症、あるいは胃や十二指腸、大腸などの消化管の壁に穴があき、内容物が外にもれ出て広がることで起こります。

急な激しい痛みに襲われる急性腹膜炎と、痛みが出たり消えたりをくり返す慢性腹膜炎があり、約95%が急性腹膜炎です。緊急手術が必要になるケースも少なくなく、放っておくと命にかかわることもあります。


原因

腹膜炎は、腹膜そのものが炎症を起こす場合と、腹腔内の臓器が炎症を起こし、その炎症が腹膜にまで広がる場合の2つに分けることができます。

●腹膜自体が炎症を起こす場合

腹膜炎を起こす原因の多くは消化管の壁に穴があく、消化管穿孔です。壁にあいた穴から胃液や腸液、大腸内の便が、腹のなかにもれ出ます。そしてもれ出した内容物が腹膜を刺激し炎症が起こります。

●腹腔内の臓器から腹膜に炎症が広がる場合

腹腔内臓器の炎症が腹膜に移ることで腹膜炎を起こすケースもあります。腹膜炎の原因となる腹腔内臓器の炎症として、腸閉塞や胆嚢炎、虫垂炎、急性膵炎、女性の場合は、子宮外妊娠などが挙げられます。



症状

腹膜炎には急性腹膜炎と慢性腹膜炎があり、発症後に起こる症状はともに腹部の痛みが中心です。また、高齢者が腹膜炎を発症した場合、症状が進行していても痛みが少ないというケースがあります。高齢者は痛みへの感覚が鈍くなっていることがあり、気づかないうちに重症化する場合があるので注意が必要です。

●急性腹膜炎の症状

突然、歩けないほどの急激な腹痛に襲われます。吐き気や嘔吐、発熱、寒気、頻脈などの症状が出る場合もあります。油ものを食べた後に右上腹部が痛くなった場合は胆嚢炎、大量の飲酒や油ものの摂取の後に左上腹部、左背部が痛くなった場合は膵炎を疑います。また、右の下腹部の痛みでは虫垂炎が疑われます。

●慢性腹膜炎の症状

急激な腹痛に襲われることはありません。2~3カ月にわたり、微熱がある、軽症から中程度の腹痛が出たり治まったりをくり返します。全身の倦怠感や食欲不振といった症状が出る場合もあります。


検査・診断

腹膜炎は緊急手術となるケースがあるため、速やかな診断が必要となります。

また、腹膜炎は原因によって治療法が異なります。そのため、問診ではいつから、どんなふうに痛いのか、何がきっかけで痛くなったのかなどを確認します。胃潰瘍や虫垂炎などこれまでかかった病歴を医師に伝えることも重要です。

問診と同時に、腹部の身体所見も大切です。腹膜炎では腹膜刺激所見といって特徴的な所見がみられます。腸音消失(腸の動きが止まる)、筋性防御(腹部が硬くなる)、反跳痛(押したときより放したときに痛みが強くなる)などの所見がみられます。階段を降りるときに腹部に痛みが響く、つま先立ちをしてかかとを落とすと痛みが響くなども特徴的な所見です。

検査では腹部X線検査、CT検査などを行います。腹膜炎を起こすと腸の動きが止まるため、小腸にガスがたまります。また消化管のどこかに穴があいて腹腔内に空気がたまっていないかを確かめます。そのほかにも血液検査、血液ガス検査、腹部超音波検査、原因となっている菌を調べる培養検査などを必要に応じて行います。血液検査では白血球増加、CRP上昇などの炎症所見がみられます。

女性の場合は、子宮外妊娠や骨盤性腹膜炎の可能性も考えられるため、婦人科の医師の診断が必要になることもあります。


治療

一般的には腹膜炎の原因を取り除く治療を優先して行います。

まず原因の除去とともに食事を制限します。症状が強い場合には絶飲、絶食とし、点滴で水分を補給します。

虫垂炎、胆嚢炎など腹腔内臓器の炎症がある場合は、まず抗菌薬を投与します。改善がない場合は、外科的に開腹または腹腔鏡で切除、摘出します。

消化管穿孔が原因であれば、穴をふさぐ手術を実施します。以前はすべての手術を開腹で行っていましたが、近年は腹腔鏡を用いた手術が中心となります。

胃や十二指腸穿孔が原因で症状が限定的で軽度な場合は、鼻から胃に挿入したチューブで胃の内容物を排出させ、胃のなかを空にした状態で抗菌薬を投与します。

こうした保存的治療を行っても状態が改善しなければ、外科的な手術が必要となります。


セルフケア

予防

腹膜炎は子どもから高齢者まですべての年代で発症する可能性がある病気です。

例えば受験勉強や仕事などのストレスが原因で消化管に穴があき、腹膜炎になることもあります。重症化すると命にかかわる場合もあるので、急激な腹痛に襲われた場合は、たとえ夜間でも早急に病院を受診することが必要です。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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