壊死性腸炎
えしせいちょうえん

最終編集日:2025/2/14

概要

新生児の腸管に壊死や炎症、穿孔(せんこう:腸壁に穴が開く)が起こる病気です。回腸下部(小腸のなかで大腸に近い部分)から上行結腸(大腸の右腹部にある部分)にかけて起こりやすいとされています。

多くは生後30日未満、とくに約90%が生後10日までに発症するといわれています。まれに30日以降に起こることもあります。

早産児(妊娠週32週以下)や体重が1500g未満の新生児はリスクが高くなります。


原因

未熟な新生児の腸周辺の血流障害、細菌感染が誘因となって壊死が起こります。

はっきりした原因はまだわかっていませんが、分娩前後と出生後に低酸素状態になることが血流障害につながるのではないかと考えられています。


症状

日本小児外科学会ではⅠ~Ⅲ期に病期を分けています。それぞれに次のような症状が現れます。

●Ⅰ期(壊死性腸炎が疑われる時期)……ミルクの飲みが悪くなる、ミルクを吐く、おなかが張っている、元気がないなど。体温が変動する、脈が遅くなる、呼吸数が少ないなどを伴うこともあり、便潜血もみられます。

●Ⅱ期(壊死性腸炎の診断が確実になる時期)……上記に加え、胆汁性の嘔吐や血便があり、おなかの張りが強くなります。

●Ⅲ期(重症になった時期)……病状がさらに進むと、胃からも出血し、腸の壊死が進行して穿孔が起きると、腹膜炎敗血症をひきおこし、ショック状態(顔面蒼白、血圧低下、冷や汗、体温低下、意識障害など)となって、全身状態が急激に悪くなります。


検査・診断

腹部X線検査、CT、超音波検査、血液検査が行われます。腸内や腹腔内などに特徴的にガスがたまることで診断がつけられます。穿孔や腸閉塞の有無も確認します。

治療

●Ⅰ~Ⅱ期:内科的治療が中心

絶食と安静を保ち、輸液、抗菌薬を点滴で投与します。Ⅱ期では、胃をからっぽにして腸管内の圧を下げるために、胃管を挿入します。これらの処置で、全身状態を改善に向かわせます。

●Ⅲ期:外科的治療

穿孔が起きていたら緊急手術となります。手術では穿孔した部分・壊死部分の切除、腹腔内に流出した体液やうみ、便などを排出するドレナージ、正常な腸を残してつなげるための処置(腸瘻造設など)を行います。穿孔によって腹膜炎が起こると、敗血症やDIC(播種性血管内凝固症候群)などを合併しやすく、死亡率は30%前後ともいわれます。


セルフケア

病後

手術によって腸を切除した場合、後遺症として短腸症候群(難治性の下痢、消化吸収障害)や腸管狭窄が起こりやすくなります。そのため、長期にわたって静脈栄養が必要になるケースもあります。

予防

壊死性腸炎は急速に病状が進行することもめずらしくありません。高リスクに該当する新生児の場合、ミルクを飲まない、おなかが張っている、機嫌が悪い、元気がないなどがみられたら、念のため早めに小児科を受診しましょう。

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監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居 明