腸重積症
ちょうじゅうせきしょう

最終編集日:2022/4/4

概要

腸の一部が後ろの腸にたたみ込まれたように入り込んで重なってしまう病気です。赤ちゃんから成人まで発症しますが、生後3カ月~6歳未満の子ども、とくに1歳未満の乳児によくみられます。

8割程度が2歳未満の発症で、2対1の割合で男児に多いとされています。症状が出ている状態で長時間放置すると、腸の血流が止まり、腸の組織に壊死が始まってしまうため、早期発見、早期治療が重要です。


原因

原因は、まだはっきりとはわかっていません。とくに乳児の場合は突発性が多いため、原因の特定はむずかしいとされています。一方、大人の場合は腸にできたポリープやがんが原因で慢性的に進行するケースが少なくありません。その場合には、原因となった病気の治療も必要となります。

●子どもの腸重積のおもな原因

・かぜウイルスなどに感染したことによって腸のリンパ節が腫れる

・腸管へのウイルス感染によって異常な蠕動運動が生じる

●大人の腸重積のおもな原因

・小腸ポリープや大腸がんなどの腫瘍

・メッケル憩室などの先天性奇形

・開腹手術後に腸管の蠕動運動が異常に激しくなる


腸重積症
腸重積症

症状

腸重積の典型的な症状は、腹痛、嘔吐、血便です。ただし、この3つすべてが初診時にそろうことはあまりありません。

まず腹痛の症状が現れ、乳児では、何となく不機嫌だったり、ぐったりとして元気がない、泣き方がいつもと違ったりするのが特徴です。

腹痛は弱くなったり強くなったりをくり返すため、痛みが治まればとケロッとしていることもあります。

しばらくすると嘔吐や粘膜の混じった血便(イチゴゼリー状の血便)がみられるようになり、腹を触ると、腸重積を起こしている部分にソーセージ状の形をしたしこりのようなものを感じることもあります。

大人の場合は大きな症状が出ないケースがほとんどです。現れる症状としては、慢性的な腹痛や便秘、下血などがあります。


検査・診断

まずは問診で腹痛や嘔吐、血便などの症状があるかを確かめるとともに、触診によって腹部にソーセージ状の形をしたしこりがないかを調べます。

つづいて超音波検査で腸重積を起こしている部分を確認します。腸重積では、ほぼ100%に近い感度で患部を特定できるため、この検査で確定診断となります。

また、肛門から造影剤を入れ、X線を用いて造影剤の流れを確認する注腸造影検査も行われます。必要に応じてCT検査を行う場合もあります。


治療

早い段階で治療を開始することができれば、細いチューブを使って肛門から造影剤や空気を注入して腸に圧を加えることで重なってしまった腸を元の状態に戻すことができます。発症してから24時間以内には、おもにこの治療が行われます。これで快方に向かえば、一晩ほどの入院で帰宅できます。

腸重積症は1~2日間は再発しやすいため、子どもの様子をよく観察することが必要です。

空気注腸しても腸が元に戻らなかった場合や発症から24時間以上が経過している場合には、開腹手術となります。

大人の場合は、腸内のポリープや悪性腫瘍などが原因となって発症しているケースがほとんどのため、開腹手術によって腸を切除することが多くなります。あわせて原因となっている病気の治療についても検討されます。


セルフケア

予防

腸重積症は、発症から時間が経つほど悪化する病気です。乳児がいつもと違う様子で元気がなく、嘔吐や血が混じった便が出るなどの異常が見られる場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。

明らかな原因はわかっていないものの、かぜなどのウイルスの影響があるとも考えられています。手洗いやうがいなどを徹底してウイルスの感染を予防することも重要です。

大人の場合、症状が出にくく、進行もゆるやかなため、自分が腸重積症になったことに気づかないこともあるようです。「よく腹痛を起こすからたいしたことではないだろう」などと思い込まず、定期的に健康診断を行い、大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。そうした行動が病気の早期発見、予防につながります。


監修

鳥居内科クリニック 院長

鳥居明

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