胆道閉鎖症たんどうへいさしょう
最終編集日:2025/2/14
概要
新生児や乳児に発症する病気です。
胆管は肝臓でつくられた胆汁を十二指腸に運ぶ管で、肝臓内にある「肝内胆管」と、肝臓を出て十二指腸につながる「肝外胆管」に分けられます。胆道閉鎖症では肝外胆管に炎症が起こり、組織が壊されて閉塞し、胆汁が流れなくなってしまいます。約85%は肝門部という胆管が肝臓の外に出る部分に起こります。
日本では9000~1万人に1人の頻度で発生するといわれ、男児よりも女児に多くみられます。難治性で、厚生労働省の指定難病になっています。
原因
原因はまだ明らかになっていません。遺伝子の異常(先天的)、免疫の異常、ウイルス感染などの関与が考えられています。
症状
黄疸、便の色の異常、肝臓と脾臓の腫れ、褐色尿がみられます。黄疸は、生理的な新生児黄疸の消失時期(生後2週間くらい)を過ぎても残っている、消えたり現れたりする、徐々に強くなっている、などがみられます。便は、便の色をつくる胆汁が流れないため、灰白色や淡黄色など淡い色になります。
胆汁の不足は栄養素の吸収にも影響し、ビタミンKが足りなくなります。そのため、けいれんを起こし、出血傾向となって脳出血などのリスクが高くなります。
検査・診断
特徴的な症状や問診から胆道閉鎖症が疑われたら、超音波検査を行って肝外胆管や胆嚢の形態をみます。胆汁の流れをみる「胆道シンチグラフィ」、血液検査による肝機能の精査、経口あるいは経鼻的にチューブを挿入して十二指腸液を採取し、胆汁の混入の有無を調べる「十二指腸液採取検査」などが行われます。
確定診断には、開腹または腹腔鏡による胆道造影を用いて、胆道閉鎖の有無を確認します。
胆道閉鎖症があると、脾臓や十二指腸などに内臓奇形を伴うことが多いため、それらの有無の確認も重要です。
新生児肝炎や遺伝性胆汁うっ滞症、ウイルス性肝炎などとの鑑別が必要です。
治療
手術が基本になります。胆道閉鎖症が進行すると肝硬変をひきおこすため、生後30~60日以内の施術がすすめられています。
手術では、閉鎖を解除して胆汁が流れるようにします。閉鎖した胆管を切除し、腸管とつなぎ合わせる再建術が行われます。術式には肝管腸吻合術、肝門部腸吻合術など複数あり、閉鎖場所や周辺の形態・状態などによって、決められます。
術後は利胆薬(胆汁の分泌を促し、流れをよくする)、抗菌薬などを服用します。
手術によって胆汁の流れが得られ、黄疸が消失するのは約60%とされています。術後も改善がみとめられない場合は、肝移植を検討します。約50%の患者が、成人するまでの間に肝移植が必要になるとされています。
セルフケア
病後
術後に起こりやすい合併症として、胆管炎や門脈圧亢進症があります。胆管炎は手術部位から細菌に感染する病気で、術後、数年たって現れることもあります。門脈圧亢進症とは、術後に肝臓の線維化が進んで硬くなり、肝臓に血液を送る血管(門脈)の血流がスムーズでなくなる病態を指します。門脈圧亢進症になると、脾腫や食道静脈瘤など、ほかの臓器の疾患リスクが高くなります。そのほか、肝内結石症(肝内胆管に結石ができる)や、まれに肝がんを合併することもあります。
また、手術で改善効果がみとめられても、数年後に肝機能が低下して、肝移植が必要になるケースもあります。
治療後も定期検診を続け、必要な時期に適切な治療を受けられる体制を維持することが大切です。
予防
胆道閉鎖症は1カ月健診の際に必ずチェックされる病気です。異常を指摘されたら、速やかに小児科を受診しましょう。
便の色の異常は、「母子健康手帳」に掲載されている「便色カード」を目安にチェックできます。結果を記入して健診の際に持参しましょう。
監修
鳥居内科クリニック 院長
鳥居 明